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価値には前提条件がある

更新日:2023年9月27日

先日、Yahooのネットニュースに毎日新聞の記事が掲載されていた。 兵庫県明石市の兵庫県立明石公園内にある旧市立図書館が約3年半の間開き施設として放置され、公園を運営する県が明石市に対し、土地の原状回復と返還を求めている問題についての記事である。


原文の一部を引用する。

解体すれば8億円 「廃虚」維持に年300万円 宙に浮く図書館跡
9/10(日) 7:30配信 毎日新聞

兵庫県立明石公園(明石市)内にある旧市立図書館が約3年半、活用されないまま空き施設となっている。公園を運営する県は都市公園法に基づき、2023年3月末までの土地の原状回復と返還を市に求めているが果たされず「不法占拠」状態が続いている。解体費約8億円がネックとされるが、維持管理のため年間約300万円が投入されている。

(中略)

◇県立公園内「不法占拠」3年半

 旧図書館は1974年、県の設置許可を得て開館した。鉄筋3階建て、延べ4987平方メートル。当初は同時開館した隣接の県立図書館が来館者への直接貸し出しをしておらず、それらサービスを補う施設として稼働していた。JR明石駅前の再開発ビルへの新図書館移転に伴い2016年10月に閉館。17年8月~20年3月、郷土史関連の資料を収める「あかしふるさと図書館」として期間限定で一部使われたが、老朽化などもあってその後は未使用のままだ。

 県は21年10月、設置許可の更新期限となる23年3月までに土地を更地にして返還するよう市に文書で求めた。県が策定した「明石公園リノベーション計画」(21年3月)では大型バス駐車場を跡地に整備する案が盛り込まれている。

 これに対し市は、当時の泉房穂市長や市幹部らが解体費を約8億円とする試算を議会に示し、「多額の負担であり、解体するだけでは市民の理解を得られない」「有効活用について県と協議する」などと答弁したが、具体策は上がらず、解決には至らなかった。

この記事に対し、有識者として不動産鑑定士と名乗る方が、『「更地価格−解体費用」が不採算のため、解体できない』というコメントを付けていた。 更地は不動産鑑定評価基準で「建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地」と定義されている。 したがって建物が建っている土地は更地ではない。ただ、土地の上にある建物を取り壊して更地にすることは出来る。 一般的に不動産の買手は居住や、商売、ものづくりなどに使う建物を探す。買い手の使用目的に合った建物が見つかれば手っ取り早いのだが、それは思っているより難しいのが現実である。目的に合った建物が入手出来なけば、更地を購入してそこに自分で建物を建てることを選択せざるを得ない。 売手としても、古い建物がそのまま売れれば良いが、そうでなければ取り壊して売りに出す選択をすることになる。 こうした場合に、土地の上にある建物を取り壊して更地にする費用、即ち「解体費用」という概念が出てくる。解体費用は多額になるため、自己資金で調達する以外に不動産の売却で得られる資金の一部を解体費用に充てるケースも多い。

このため、解体費用が更地として売れる価格より低額であることが重要になってくる。 解体費用が更地価格より高額であれば、売却代金で解体費用を賄いきれず、他から資金を調達しなくてはならなくなるからである。 土地の所有権も譲渡してさらに資金が必要ということになれば、よほどの理由がない限りそのような選択をする人はおらず、解体という選択をしないということになる。 だから、『「更地価格−解体費用」が不採算のため、解体できない』という結論になるのである。 しかし、記事を読むと引っかかることがある。 建物の所有者は市であり、県が建物を取り壊して明け渡しを求めていると書かれているのである。 この辺の権利関係が明確にされていないのであるが、県が跡地を大型バスの駐車場として利用することを考えているのだから、この土地は恐らく県の所有地ではないかと考えられる。 更地は「建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地」であるから、借地関係がある土地はそもそも更地ではない。どのような契約がなされているかにもよるが、借地借家法の適用を受けないのであれば、借主は契約終了後、建物を取り壊して貸主に土地を返還しなくてはならなくなる。 (あくまでも推測であるが、この土地は公共公益の目的に使用するため、市が県から無償で借り受けているものなのではないかと思われる) そうなると、建物解体は費用の如何を問わず借主の義務であり、『「更地価格−解体費用」が不採算のため、解体できない』といったことは起こりえないのである。 恐らく、コメントした方が「建物解体」というキーフレーズから反射的にこうした見解を述べたのではないかと推測されるのだが、しっかり前提条件や事実関係を把握しないと的外れな答えになってしまうという良い例で、他山の石としなければならない事例だろう。 仮に実務でこの記事のみでコメントを求められても、大抵の専門家は契約書を取り寄せて確認するなどの対応をしてから回答するはずである。 不動産に限らず、有形資産その他の価値は前提条件や利用のシナリオ如何で大きく異なる。したがって、前提条件は非常に重要なものであり、その点は今一度気をつけたいものである。 【参考】価値と価格は何が違うのか

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