• Hideyasu Matsuura

YS-11

 少し前に、仕事で横浜の鶴見を何度か訪問しました。折しも、今年4月から9月にかけてNHK連続テレビ小説で鶴見を舞台にした「ちむどんどん」が放送されていましたので、地元の方に伺ったところ、確かに鶴見は沖縄から移り住んで来た方が多く、沖縄の人のコミュニティはあるものの、最近では日系人やその他外国人の方が多くなっているとのことでした。番組を見ても、設定は鶴見であるものの地元でやっている感覚はほとんど感じられなかったそうです。

 

 10月からは新作の「舞いあがれ!」が始まりました。こちらは飛行機に魅せられた少女がパイロットになるという物語で、東大阪の螺旋を作る町工場が舞台であったり、航空機が出てきたりと、仕事的にも趣味的にも興味深い内容です。


 物語は、大阪の町工場を経営する一家の女の子が、長崎の五島列島にいる祖母の元を訪れ、五島列島の「ばらもん凧」に魅せられて、やがてパイロットを目指し険しい道を乗り越えていく展開であるという。

 

 物語の中では、1994年の設定で五島の福江から大阪伊丹空港まで飛行機に乗るシーンがあり、実際に当時五島と大阪を結ぶ便に就航していたYS-11の映像が使われ、機内の様子も兵庫県の但馬空港に保存されている実機を使用して行われたと言うから、このシーンを見てなかなか作り込んでるなと思わず唸りました。


 YS-11といえば戦後日本が開発した国産の旅客機で、日本の戦後復興のシンボルの一つとされていることからご存じの方も多いと思います。

エアーニッポンのYS-11

 そのYS-11に1度だけ乗ったことがあります。

 YS-11は1990年代までは大阪や北海道、九州、沖縄、伊豆諸島の路線などで使われていましたが、地方空港の整備やYS-11自体の老朽化もあって、2000年代に入ると、北海道内路路線や、鹿児島から奄美諸島の路線に残る程度まで、勢力が縮小していました。

北海道も2003年8月でYS-11は退役しましたが、その年の4月にエアーニッポンの函館から丘珠までの便に乗りました。

昭和40年代の雰囲気の機内

 このときターボプロップ機の乗るのも初めてで、80~90年代に製造されたジェット機ばかりに慣れ親しんでいたため、内装の古めかしさには逆に新鮮なものがありました。

空調吹き出しや照明、コールボタンなどのフォントは昭和40年代の家電にあったような感じのもので、窓の下の壁には穴をパテで埋めたような跡もあり、まさに"老体にムチ打って飛んでいる"ような印象を受けました。


 エンジンスタートすると機体が小型の割に音が大きかったのが意外で、離陸をしてみるとよく言えばフワリフワリと上昇していく感じ。


 ハイパワーのエンジンで矢のように上昇していく新鋭ジェット旅客機に比べれば、もっさりとどこか頼りない印象でもありました。

函館空港を離陸して間近に見える五稜郭
函館空港を離陸して間近に見える五稜郭






 とはいえ、もっさり飛んでくれたお陰で函館の名所である五稜郭も余裕で写真に収めることができました。



まん丸い倶多楽湖
まん丸い倶多楽湖

 函館~丘珠は近距離便でもあり、非力なプロップ機には1万フィートを少し超えるくらいがやっとで、低めの高度を飛びます。その分、天気が悪ければ揺れやすく、天気が良ければ景色を堪能できます。


 このフライトは運良く快晴で、長い冬から目覚め、少しだけ春めいてきた北の大地の様子が窓一面に展開され、心を揺さぶると言っていいほど素晴らしいものでした。

 まん丸い倶多楽湖や羊蹄山に支笏湖、眼下のスキー場には豆粒のようなスキーヤーの姿。本州ではもうシーズンも終わりですが北海道はまだまだシーズン中といった感じでした。


 ドラマでは幼きヒロインがどのような風景を見たのか、描写はなかったようですが、恐らく、心惹かれるものがあったに違いありません。


 もう20年近く前のことになるのですが、今でも鮮明に思い出せるほど印象深い旅になりました。


 国産の旅客機が姿を消して長い時間が過ぎ、就航が期待されていたMitsubishi SpaceJetも事実上の開発凍結状態に入ってしまいました。

航空機産業は裾野も広く、高い技術力や豊富な資金力が求められるため、なかなか一国のみで生産ができるものではないのですが、新しい日本の翼が生まれてこないのは少々残念なこと。

 近年は、環境保護の立場から航空機自体への風当たりも強くなり、新しい燃料の開発や、電動の航空機の登場、さらに有人で飛ぶクアッドコプターも開発が進んでいます。  空の旅の醍醐味をこれからの世を生きる人にも知ってもらえるよう、技術の進化がありますように。

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