ネット上でバイオマス発電についての記事を見つけました。
日本のバイオマス発電に未来はあるのか 欧州、再エネと認めない方針 国内、燃料高 騰で発電休止
特に輸入植物油を燃料としたバイオマス発電が認められなくなるとのことです。記事の冒頭にも説明があるように、バイオマス発電は木くずや間伐材、可燃性ゴミ、廃棄油など、植物に由来する燃料を燃やしたり、ガス化して電力を生み出す発電手法です。
植物由来のものであっても、燃焼させれば当然ながらCO2は排出されますが、植物は生育する過程において光合成を行うため、CO2を吸収することになり、実質的に±ゼロになると言う論法で「再生可能エネルギー」に位置づけられています。
日本の電力固定価格買取制度(FIT)でもバイオマス発電による電力は買取の対象になっていて、売電収入を当て込んで多数の事業者が参入しました。
買取価格が固定額であれば、経費が少ない方が利益が増えますから、当然設備に対する投資や、バイオマス発電では必須となる燃料の調達コストを安くしようと考えるのが通常の事業者です。
国内で燃料を調達しようとすると、どうしても割高になります。調達できる燃料も木材チップが種で、集められる量にも限界があります。木質系のバイオマス発電は基本的にボイラーであり、発電量を増やした場合でも発電量1単位当たりのコストが小さいため、大規模なプラントの方が効率が良くなり、安価で大量に燃料が調達できる外国産材の方が好まれます。
また、植物油の燃料を使ってディーゼル発電機により発電を行う方式もありますが、これもパーム油など、もっぱら海外からの燃料輸入が頼りです。
かつて、木質系と植物油発電事業について関係したことがありますが、バイオマス発電は燃料をいかに調達するかが事業の成否を左右することがわかりました。国内材でバイオマス発電を行うのであれば、林業関係との連携が欠かせず、人脈も必要になります。一方海外からの燃料輸入に頼る場合には燃料供給の安定性(価格・供給量)が課題になります。
植物油の発電事業に携わっている方からは「燃料供給に心配はない」とは伺っていたのですが、冒頭の記事にあるとおり、当初から懸念されていた燃料供給の安定性の問題が現実になっています。 先週開催された、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では排出削減対策がない石炭火力発電所の廃止を盛り込んだ声明に、欧州主要国をはじめとする46カ国・地域が署名するなど、環境対策の要請が年々厳しい状況になってきています。 バイオマス発電は身近にあるエネルギー源として比較的小さなエリアで資源のサイクルを作ることが基本だったはずで、経済性を追求して広いエリアから燃料を集めようとしたことが、運搬のためのCO2排出につながっているとも考えられます。日本の固定価格買取制度でも間伐材等由来の木質バイオマスFIT制度による買取価格は32円/kwh(発電能力が2,000kwh未満の小規模発電施設では40円/kwh)、輸入材の場合、発電能力10,000kW以上は入札方式で価格決定、10,000kW未満は24円/kwh、植物油などの燃料の場合も入札方式で価格決定となっており、国内の森林資源の有効活用の観点から国内材優遇の措置が取られてきました。
国内でも以前から燃料輸入型のバイオマス発電は再生可能エネルギーの本旨にそぐわないという批判があっての措置でしたが、特に脱炭素で影響力が大きいEUに認められないとなると、新規の発電所建設は難しくなるでしょう。 特に、バイオディーゼルの発電施設に評価案件として取り組む場合は、難しい判断を迫られると思われます。 太陽光発電施設の乱立する一方、その他の再生可能エネルギーでの発電は思うような成果が上がらない現状で、日本の再生可能エネルギーは厳しい方向に向かいつつあるようです。
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