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  • Hideyasu Matsuura

EUタクソノミーの破壊力①

更新日:2021年10月20日

ここ数年"SDG's”がブームになっています。

SDG'sは「持続可能な開発目標」のことですが、抽象的な文言が並んでいて具体的に何をすべきなのか、今ひとつ良く分かりませんでした。その後、街を行く人の胸にSDG'sのバッジがついているのを良く見るようになり、それでもってどんな効果があるのかと不思議に思ってはいたのですが、徐々にサスティナブルな経済活動が現実のレベルで求められるようになってきました。


先日、日本資産評価士協会(JaSIA)の会員交流会でサイクラーズ株式会社の福田隆代表取締役が講演され、環境意識の高まりにより事業用資産の中古市場の需要が高まるとみて、新たな事業展開をされているというお話しがありました。

その潮流として世界的な経済活動の流れ、特に温室効果ガスの排出削減、カーボンニュートラルが大きく影響しているとのことでした。


温室効果ガスの排出削減に大きな影響力を持っているのはヨーロッパ連合(EU)であり、「欧州グリーンディール」で2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを掲げています。また2030年の温室効果ガスの削減量も1990年水準の55%を削減する目標を設定います。こうした動きが世界的な温室効果ガス排出削減競争に繋がり、日本でも2020年10月に菅前総理大臣が2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロの目標「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を掲げ、予算、税、規制改革・標準化、国際連携などあらゆる政策への落とし込みをはじめています。 投資市場や経済活動においても、SDG's、特にカーボンニュートラルが重視されるようになってきており、投資家サイドから企業側に温室効果ガス排出削減を求める圧力が強まっています。 特に大きな影響を持つと考えているのがやはり欧州グリーンディールで、この政策を実現するための具体的施策であるEUタクソノミーが特に投資の分野を左右していくだろうと予測されます。 タクソノミーとは、「環境面でサステナブルな経済活動(=環境に良い活動とは何か)」を示す分類であり、環境や持続可能性がどういうものかの統一的な基準を示したり、環境に良いように見せかけ消費者を欺くような行為(グリーンウオッシュ)を防止することが目的となっています。

タクソノミーでは

  1. 6つの環境目的(気候変動の緩和、気候変動の適応、水資源と海洋資源の持続可能な利用と保全、循環経済への移行、汚染の防止と管理、生物多様性とエコシステムの保全と再生)の1つ以上に実質的に貢献する

  2. 6つの環境目的のいずれにも重大な害とならない(DNSH)

  3. 最低安全策(人権等)に準拠している。

  4. 専門的選定基準(上記1・2の最低基準)を満たす。

の4項目を全て満たす経済活動をサスティナブルなものと分類します。


産業分野ごとにライフサイクル全体にわたって上記1.6つの環境目的の1つ以上に実質的に貢献する 上記2.6つの環境目的のいずれにも重大な害とならない(DNSH)。に該当するかを上記4.の専門的選定基準に基づいて判定し、かつ上記3.最低安全策に準拠している活動がサスティナブルな経済活動と認められ、金融市場参加者に対して情報を開示されることにより、環境に優しい企業活動への投資を促そうとするものです。


2022年1月から、上記の「気候変動緩和」「気候変動適応」について適用が開始され、2023年には残りの4つの環境目標について適用が開始されます。当面は従業員500人超の大企業が対象となりますが、タクソノミーの基準は、将来的には徐々に厳格化されるべきものであるとされていることから、将来的にはより小さい企業も直接の対象になる可能性も排除はできず、また、大企業との取引を通じて間接的に対応を求められることになる可能性も考えられます。


こうしたことから、この先数年は今以上に環境配慮の考え方が強くなっていくのではないかと考えられます。

 
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