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Hideyasu Matsuura

木質系バイオマス発電の理想と現実(3)

更新日:2021年3月25日

 ここのところ、東京電力柏崎刈羽原子力発電所での核物質防護不備を巡り原子力規制委員会が安全重要度を最悪レベルと暫定評価したというニュースが流れて、復活の法に流れているかのように見えた、原子力発電に対する不透明感が高まったように思う。  化石燃料による火力に長期的に頼ることもできない中で、再生可能エネルギーに対する期待は一層高まるのであるが、再生可能エネルギーも一筋縄で行くものではない。  原子力同様のベースロード電源に位置づけられるバイオマス発電であるが、基本的には再生可能エネルギーに由来する火力発電のようなものであり、燃料の確保が事業の成否に大きく関わることはこのコラムでも何度か紹介している。  そのバイオマス発電について東洋経済オンラインに興味深い記事が掲載されていたので御紹介したい。

期待の再エネ「バイオマス発電」の理想と現実 国内材確保が難しく、輸入木材が急増している |資源・エネルギー - 東洋経済オンライン https://toyokeizai.net/articles/-/416716

 植物油由来のバイオマス発電では海外からの輸入に頼る事業者が多いが、木質系でも同様に輸入チップを燃料とする発電事業が多くなってきている。

 日本は広大な森林を抱え、戦後植林された人工林が手つかずで放置されているから、森林の活用とクリーンエネルギーの確保の一石二鳥と考えられていた木質系バイオマス発電も、いざ始めてみると当初の目論見通りには行かず、輸入チップが重用される結果となってしまっている。  機械設備評価の世界では、スケールファクターという言葉を使う。コスト-キャパシティ法でこのスケールファクタが使われるのであるが、木質系バイオマス発電施設はスケールファクタが大きいと言われている。スケールファクタは大体0.4~1の間であると言われているが、1に近いという。どういうことかというと、スケールを大きくしてもそれに応じて投資額が大きくなるかというと、そうでないということである。更に言えば、投資するなら大きなプラントにしてしまった方が経営面でメリットが大きいということである。  もちろん、プラントが大きければ、その分必要となる燃料も多くなるから、チップを大量に確保する必要がある。急峻な地形が多い日本の山林では搬出に多額のコストがかかり、林業従事者の確保も難しいから、手に入りやすい輸入チップを...ということになってしまう。

 海外産のチップを使えば、再生可能エネルギー導入がCO2排出量削減というそもそもの目的が没却されてしまう。輸送に化石燃料が必要になるし、CO2の排出と吸収のサイクルも成り立たなくなってしまう。そんなバイオマス発電のために電気の利用者に対し、再生可能エネルギー賦課金を課しても良いのかということにもなる。  再生可能エネルギーの導入が一気に進む契機となった、東日本大震災から10年が経過したが、再生可能エネルギーにまつわる諸政策のいい点、悪い点も見えてくるようになった。  PDCAサイクルの、CとAが今後益々重要になってくる。我々の立場からできることはそれほどないが、動向を注視していきたい。

 

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