研究会では、LLP(有限責任事業組合)の時代からネットでミーティングを行っているが、先日メンバーから、雑誌に事業性評価を併用したABLに取り組んでいる会社の記事が出ているという話が出た。
回収を目的としない担保評価
記事によれば、その会社は動産担保融資の評価は行うものの、回収を意図したものではなく在庫を評価することで事業性評価の可能性を広げ、その企業の持つ将来性に対する融資を引き出すというスタンスを取っているという。 この戦略は、非常に理にかなっている。 銀行を訪問して機械設備評価の話をするとABLの話になるが、ほぼ「ABLはダメ」と言う話になる。何故かと言えば「ほとんど回収できない」からだという。
どのような状況で価値を最大化できるかという思考
このコラムで何度も扱っているように、企業が返済に滞って担保を換価する場面はすなわち清算と言うことになる。清算になると少なからず価値が落ちる。特に法的に清算が求められるようになる(強制清算)と相当に価値が低くなってしまう。不動産の場合は強制清算でもある程度の換価はできるが、在庫、動産の場合は二束三文になってしまう。したがって、事業をいかに止めずに換価できることが重要であり、私的整理を目的としたM&Aなどによる換価の方が望ましい。 「動産を担保に取ったら、回収した担保を保管する倉庫をどこに用意するのか?」と聞かれることがあるが、そもそもそのような発想であれば担保は不動産のみにした方がいいだろう。 要は、マーケットがいちばん高い価格で買ってくれる状態で処分すること、そのためのコストを低く抑えることが成功の秘訣である。
事業性評価と動産担保評価の類似性
以前から事業再生や中小企業の伴走支援をしている方のお話を伺うことがあり、そこでやっていることを伺う機会があったのだが、よくよく聞いていると我々がABLの評価でやるべきこととされていることと似通った部分があることにだいぶ前から気付いてはいた。その企業の持つ在庫や販路の優位性といった企業の価値の部分は在庫資産の評価の作業で副次的に明らかにすることができると考えられるからだ。 しかし、話の持っていきかた、コラボレーションの仕方が良く分からず、ABLの関しては評価経験も少なく、だいいち、融資に応じてくれる金融機関もなさそうだから特に熱心に売り込むこともしないでずっと放置してきたのが正直なところである。 とはいえ、これから本格化していく不況の嵐を乗り切るためにはもしかすると必要になってくるかも知れない。
フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰
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