衛星携帯電話でローカル通信会社に淘汰の波?
- Frontier Valuation

- 9月12日
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2025年9月12日付の『Times of India』の記事によれば、イーロン・マスク氏が「2年以内に携帯電話が直接衛星と接続できるようになる」と述べたという。
マスク氏はSpaceXとStarlinkの技術的な進展により、携帯電話が直接Starlink衛星と接続できるようになると発表。この技術革新によれば、従来の地域の携帯キャリアを介さずに、世界中どこでも高帯域幅の通信が可能になるとしている。ただし、実現には携帯電話のチップセットの更新が必要であり、約2年の期間が見込まれる。また、SpaceXはEchoStarから170億ドルで周波数帯域を取得し、Starlinkの直接通信サービスを強化する計画である。
現在の携帯電話は地上に張り巡らされた基地局に接続しているが、新技術ではStarlink衛星に直接接続して通信することから、ローカルの通信会社の設備はいらなくなるということになる。現在の技術ではつながりやすさは基地局の密度と帯域がキーになるが、Starlink衛星は全地球をカバーできるので、基地局のない山中や海上でも通信が可能になる。 つまり、この通りであれば、ローカルの通信会社は新技術によって淘汰されるであろう。 問題はコストである。衛星携帯電話自体は既に存在する。1990年代から「イリジウム」のサービスが提供されているが、あまり馴染みはないのではなかろうか。イリジウムもStarlinkと同じように衛星を介して通信が行われるが、問題はコストである。1GBで数万円レベルで、専用の端末が必要であり、一般の携帯電話とは全く勝負にならないくらい高コストである。しかし、通信環境がない山岳地帯や、海上、極地では強みがあり、通信環境が途絶してしまう災害時にも威力を発揮する。船舶向けではインマルサットが主力であるがイリジウムも遅延が少ない特性が評価され緊急用などでは使用されており、海上保安庁などでは利用されているという。自治体などでも災害用に衛星携帯電話は活用されている。 このように高コストながら特性を評価されてニッチの市場で重宝されているのが現状である。 Starlinkは低高度で打ち上げコストの低い衛星を打ち上げて、高速で高品質、低コストを実現できる点が、旧来の衛星通信とは異なるが、それでも地上の基地局を利用する通信網に比べれば高コストになるとされている。場所を問わない反面、混雑時に臨時に基地局を設けたりといったような小回りが利かない点では地上の通信網に分があるとの見解もある。ただ、通信網が未整備な開発途上国ではこれから通信網を整備するよりも、迅速、安価に通信網が整備できるという利点はある。グローバルサウスと呼ばれる地域がこれに当たるから、中長期的にはイーロンマスク氏が、これらの地域の通信を牛耳ることもあるかもしれない。
新技術によって様々な業種が淘汰の憂き目に遭いそうだが、インフラ事業である通信も激変の波がすぐそこに近づいているのかもしれない。




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