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  • Hideyasu Matsuura

思えば周回遅れは始まっていた~日本のインターネット黎明期

 先週末にネット記事を閲覧していて、こんな記事を見つけました。

「へんな人間も私だけになった」、30周年のIIJ鈴木会長https://ascii.jp/elem/000/004/171/4171525/

 インターネット・イニシアティブ・ジャパンは日本初のインターネットプロバイダですが、設立されたのは1992年12月のことでした。私が大学に入学したのが1992年の4月で、できればパソコンが欲しかったんですが、当時はNECのPC98シリーズが40万円くらいで売られていた時代でした。予備校時代の友人が第一志望で東京工業大学に入学した褒美にPC98を買ってもらったと聞き、羨ましく思ったのですが、ド文系の私の場合、パソコンを買う動機など当時はほとんどなく、新宿のヨドバシカメラで半値になったワードプロセッサ・東芝ルポを買ってきて、パソコンに少しでも近づければと思いつつ、いじり倒しました。  パソコンも次第に低価格化していって、実家の鑑定事務所でもパソコンで地価公示や地価調査のデータ処理をやるようになっていました。パソコンに詳しい市内のK先生の手ほどきを受け、帰省した時に集計や入力をやったのですが、Windows3.1は搭載されていたもののまだまだMS-DOS全盛の時代で、面倒なコマンドを入れてプログラムを起動したりしていました。  そのころ、大学の電算機センターで、データベースを使うためにの講習があり、講習を受けて申請するとIDをもらえるというので参加してみたのですが、こちらもUNIXのシステムにログインするためにコマンドを打たなければならず、数字を入力するのにテンキーを使ってしまい、注意されるなど、とにかく敷居が高くてげんなりしたものでした。  当時はインターネットの「イ」の字も知らなかったのですが、そのうち世間でインターネットについて情報が流れ始めるようになります。TBSのニュース23は故・筑紫哲也さんがアンカーマンを務めていた時代で、時々作家の故・立花隆さんが出演して「インターネットは素晴らしい」「インターネットが世界を変える」と嬉々として話されていたのを目にして、インターネットというものに触ってみたい。とあこがれたものでした。とはいえ、電車に乗ると週刊誌の中吊り広告に

「立花隆氏が熱狂する『インターネット』をやらないと時代に取り残されるのか」

などと、冷淡に嘲笑する見出しがあったり、まだまだインターネットの可能性は信じられてはいない空気でした。もっとも当時はWebを閲覧しても文字主体のページで画像や写真がちょぼちょぼ載っているくらいでしたので、可能性を疑う人が多くても無理はなかったと思います。  そんな中で、いちばん衝撃だったのが、IIJの鈴木社長(当時)の講演でした。  既に30年近く前のことなので、聴講するまでの経緯はほとんど覚えていなかったのですが、その後インターネットと付き合う上で大きな影響を受けた講演でした。 インターネットとは何なのか=Webをはじめ電子メールやNTPなどいろんなサービスの数合体であること。IIJも設立時に後発の日本のくせに「イニシアティブ」とはけしからんとのことで「ジャパン」とつけることで落ちついたとか、世界中の海底ケーブルの状況を通信業界の関係者は常に気にかけている..など、断片的にではありますが、今でも覚えています。  いちばん衝撃的だったのは「皆さん、インターネットというと真っ先にWebを思い出されると思いますが、実際に使ってみるとおそらく電子メールの使用頻度が一番多いと思います」という趣旨のお話で、これを聞いて「早くインターネットを使ってみたい」と強く思ったものでした。


 記事にある、日本での最初のインターネット接続事業者認可についてもおそらく講演の中で話があったとはおもうのですが、これは記憶にありません。 安定したサービスの提供を義務付けることを求めて1年以上認可までに時間がかかったという話は、30年経った今もまだまだ日本の官僚制度の中で残っている話ではあります。  機械設備評価の日本導入にあたっても当時の日本資産評価士協会の幹部が、金融庁の金融検査マニュアルに機械設備の公正価値評価を盛り込むよう陳情したものの、全国の金融機関が同等のサービスを受けられる程度に人数を増やさないとマニュアルに記載することはできないと拒否されたという話が残っています(金融検査マニュアルはすでに廃止)。


 一人当たりのGDPは各国にどんどん追い越され、OECDでも下から数えた方が早い。それでも社会が変わる予兆すらしない今の日本はこの頃の出遅れが積み重なってできたもので、思えば周回遅れは始まっていたのかもしれません。ある意味、ホットな情報に触れていたにもかかわらず、先を見通す目がなかった自分にも恥じ入るところです。

 AI、メタバースその他もろもろ。これからも科学技術は進歩していくはずで、30年後の世界を席巻するようなものが、今は種の状態かあるいは芽を吹きだしたばかりの状態であるはずです。そんな出会いがあるのかわかりませんが、今度こそはしっかりキャッチアップしていく必要があるでしょう。

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