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執筆者の写真Frontier Valuation

「ソーラーパネルで得られるエネルギーより製造にかかるエネルギーが大きい」はデマである

更新日:2023年11月10日


 「太陽光パネルは廃棄処理出来ない」と言う主張がデマであることをことをひとつ前に記事にしたのだが、太陽光発電の無用性を主張する言説はこれだけではない。 確かに景観を破壊したり、土砂災害を惹起したりするお行儀の悪い太陽光発電施設が全国のあちこちに蔓延っているのが現実であるが、これに乗じてかどうか分からないが、太陽光発電はむしろ環境に悪いとする”事実”があるという主張が世の中に存在する。  確かに黒くて見た目があまり良いとは言えない太陽光パネルは、なんとなく毒々しいイメージがあるかもしれない。太陽光パネルは有害物質を含んでいて溶け出すという主張が出てくるのも、その辺りの見た目の悪さから来るものなのかもしれない。  もちろん、見た目が悪いからと言って使ってもいない有害物質が溶け出していることにしてしまって良いわけがなく、知らないで主張しているのであれば無知であり、知っていて事実でないことを言うのは不誠実であり、無から有を生み出せると信じているのであれば信教の自由の範疇のことである。  太陽光発電に関しては「ソーラーパネルで得られるエネルギーより製造にかかるエネルギーが大きい」と言った言説も存在する。確かにガラスや樹脂、金属で出来ている太陽光パネルは製造時に大量のエネルギーを使っている可能性はありそうである。  この点について経済産業省所管の公的研究機関である国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)がこれを打ち消す内容の記事を公開している。

太陽光発電のエネルギー収支 製造で使ったより多くのエネルギーを節約する。 
https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/PV/ja/about_pv/e_source/PV-energypayback.html 

 記事によれば、エネルギー源としての性能を示す指標。すなわち、発電設備の製造などに要したエネルギーに対して、どれだけたくさんのエネルギーを得られるか(発電によって、どれだけのエネルギー消費を回避できたか)を示す指標に、EPT(エネルギーペイバックタイム)とEPR(エネルギー収支比)と呼ばれるものがあり、EPT、EPRのいずれの指標でも投入された燃料の数倍に相当するエネルギーが得られているとのことである。  しかも、この記事が書かれた時点より10年以上昔の技術でも、太陽光発電は投入された燃料などの数倍に相当するエネルギーを得られていたといい、この記事の最終更新が2010年2月12日であることから、既に2000年代初頭にはその状態であったと考えられる。  太陽光発電の投資が盛んになって2010年代にも技術革新が進んでいたことを考えると、一部で語られている説「ソーラーパネルで得られるエネルギーより製造にかかるエネルギーが大きい」はデマであると容易に推定ができるのである。  太陽光パネルの寿命についても20年と一般的に言われていたものが、30年、それどころか40年近く稼働している施設も出現している。固定価格買取制度で設備のコストを検討する過程でも最近はパネルの寿命を25年と考えるようになっているし、機械設備の資産評価に従事する仲間の間でも管理が適切であることは前提であるが35年程度は余裕で使えるとみる意見が多い。  勿論、産総研は政府の見解に反する見解を出すわけがないから、事実をねじ曲げているお考えになるのであれば、それは個人の自由であるので否定はしないが、ネット上の根拠の薄い情報よりは説得力のある説明であることは間違いないだろう。

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