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執筆者の写真Frontier Valuation

原子力発電施設の耐用年数は?

 その動きの一つとして経済産業省は経済産業大臣が運転を継続すると認める原子力発電所については、原子力規制委員会の審査を通すことによりの運転期間を最長60年とする規制を撤廃する案の検討に入っていることが報道されている。

 この最長60年とするルールは、福島第一原発事故後の2012年6月に「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の改正で、原発の運転期間は使用前検査に合格した日から起算して40年、1回に限り、20年を超えない期間延長することができるとされたルールをいう。

 福島第一原発の事故の前までは、原発の老朽化に対する規制は存在しなかったが、原発以外にも1960年代~70年代に整備された公共インフラや機械設備の老朽化が問題になっていたこと、原発事故で施設の安全に対する目が厳しくなったことを受けてのルール設定であった。


 感覚的な話であり恐縮ではあるが、40年を上限としたルールにはしっくりくるものがある。大きな機械設備の場合これも感覚的な話ではあるが、20年くらいで故障が増えたり、最新の機械設備に比べて見劣りが否めなくなる印象で、ここで手を入れるとあと20年くらいは持ちこたえられるが、40年になるとさすがに置き換えた方が効率的といった印象を持つことが多いからである。

 もちろん40年を経過したら次元爆弾のように機械設備が崩壊してなくなるといったようなことではなく、手入れをすれば使うことは出来るものの、技術革新などによる様式の変化で補修備品が入手出来なくなったり、修理箇所が増えて直しても直しても間に合わなくなるといったような機能的、経済的な面で実用に耐えにくくなるというのが経過年数40年程度が一つの大きな区切りだと思う理由である。  一般的な機械設備であれば、新しいものに置き換えることによって事業として時代の変化に順応していくものではあるが、原子力発電は性質上新規の立地は容易ではなく、現状の箇所での置き換えも簡単ではない。つまり再調達のハードルが高い施設であり、既存のものをできるだけ活用しようとする動きは必然であるといえる。  実際に現場で機械設備の運用に当たっている人にお話を伺うと、手入れさえすれば、50年でも100年でも使えますよと回答されることも多い。もちろん金に糸目をかけずに、あるいは負担がかからないようなソフトな使い方をしていけば可能ではあるかもしれないが、現実的には経済面での見合いが壁になる。  原発の場合、求められる安全性のレベルは高く、その分頑丈に作られたりしている。さらに、厳しい検査が義務づけられているからプラントの整備状態は良好ではなかろうかと思う。 一般的な機械設備に比べて物理的な耐久性はどの程度長くなるのか定かではない。また、交換部品はしっかり交換して手入れをしっかりしていれば物理的な残存年数は長くなる。しかし、仮に40年、あるいは60年、それ以上の期間、物理的には使用可能だとしても経済的にペイできるのか、電気料金や他の発電方式、電力の価格は間接的に様々な物の生産コストにのしかかるものだけに国際競争力の観点からもどの程度までコストアップが許容されるのか、興味深いところである。実際に現在の老朽火力発電所がそのような状態で、電力供給がタイトである物の限界の狭間でギリギリ持ちこたえていて、耐えられなくなってリタイアする設備がポロポロと出ている状態である。 原子力発電も技術革新によって安全性で効率のよい発電方式が確立されると良いのではあるが、福島第一原発の事故があった頃、次世代の発電方式として有望だと紹介されていた技術も実用化には至っておらず、原子力発電が忌避されていた10年の存在もあって、見通しは明るくないようである。 我々が業務で原子炉を相手にすることはないだろうが、電気がなければ全てが成り立たないと言っていいほどであるから、安価で安定的な電力供給は望むところである。ただし一歩間違えれば、多くの人の生活を破壊する事実も目の当たりにしてきただけに、慎重にも慎重な判断も必要であることはいうまでもない。


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