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物理的耐用年数と経済的耐用年数・機能的耐用年数

最終更新: 10月29日

耐用年数のいろいろ 耐用年数は「償却資産が使用に耐えうる年数」をいう。 評価の場面でよく問題になるのは「耐用年数」が「物理的耐用年数」が「経済的耐用年数」かという点である。 その前に耐用年数というものにはいろいろあるので整理しておく。 富山県黒部市のサイトにある「 計画保全(長寿命化)に対する考え方 」の定義づけがわかりやすいので引用させて戴く。 ①法定耐用年数 ・・・ 固定資産の減価償却費を算出するために税法で定められた年数。

②物理的耐用年数・・・ 建物躯体や構成材が物理的あるいは化学的原因により劣化し、要求される 限界性能を下回る年数。

③経済的耐用年数・・・ 継続使用するための補修・修繕費その他費用が、改築費用を上回る年数。

④機能的耐用年数・・・ 使用目的が当初の計画から変わったり、建築技術の革新や社会的要求が向上して陳腐化する年数。 一般に ④<①<③<② の順に耐用年数が長くなる。 一般に会社の資産台帳上の価格(貸借対照表価額)は①の法定耐用年数により求められている。一方、機械設備の時価評価においては法定耐用年数を用いることはない(不動産鑑定で償却資産の価値(価格)を求める場合、税法と同じ年数が用いられることもある)。 ■実際によく使うのは法定耐用年数   わが国では、多くの企業が実務上見積もりが困難であるという理由で税務上の法定耐用年数を用いて減価償却計算を行っている。 但し、これは、経済的耐用年数を見積もった場合と法定耐用年数に著しい差異がないことが前提である。つまり、資産の使用開始後に、経済的耐用年数と法定耐用年数が乖離していることが明らかな場合には、法定耐用年数を使用することは会計上認められないというのが本来の考え方である。

 しかしながら、経済的耐用年数と法定耐用年数が乖離していても法定耐用年数を用いているケースが多いのが実情で、「簿価1円の資産で多額の利益が出ている」などと吹いて回る専門家もいるほどである。  こうしたことから、法定耐用年数を「一般的耐用年数」、経済的耐用年数を「個別的耐用年数」と呼ぶこともある

機械設備評価(時価評価)における実効(使用)年数/残存年数分析  時価評価の世界では法定耐用年数をそのまま使うことはない。そもそも、簿価と同じことをやって出てくる数字は簿価であり、時価ではない。求めるものは「個別的耐用年数」である。時価と簿価が異なるのは当然であり、事実に即した専門家の分析があって導き出されるのが時価である。 評価理論で考察するのは物理的耐用年数と経済的耐用年数である。 ASAのPOVで教えられるコストアプローチの基本式は

新規再調達コスト-物理的劣化-機能的退化-経済的退化
=コストアプローチによる公正市場価値(FMV)である。

このうち物理的劣化の算定に当たっては使用年数と残存年数の分析が用いられる。使用(実効)年数+残存年数=耐用年数となるのだが、冒頭で述べたように、この耐用年数は物理的耐用年数か、経済的耐用年数かという議論が起こる。 最も素直な理屈で言えば、物理的劣化の算定に当たって前提となる耐用年数は物理的耐用年数だろう。物理的耐用年数であれば、物として最低限の性能を発揮していれば良いが、経済的耐用年数であれば、維持、修繕、補修にかかる費用も勘案されることになる。また、そもそも「物理的劣化」を求める作業で、「経済的退化」を求める作業が別に必要なのであるから、経済的退化を含まない数字で考慮されるのが最も素直だからである。   ■経済的耐用年数と機能的耐用年数の分析

 前出の富山県黒部市のサイトにある耐用年数の定義は非常に興味深い。「機能的耐用年数」という用語はあまり耳にしたことがないからだ。しかしながら、機能的な陳腐化というのは現実的に起こるものであり、「機能的耐用年数」という概念はわかりやすいと思う。

 また、そう考えると、物理的劣化が実効(使用)年数+残存年数=耐用年数で求められるのであるから、(一般的に「実効(使用)年数/残存年数分析」を使うことがない)機能的退化と経済的退化の算定も、その"耐用年数"が分かれば同じような実効(使用)年数+残存年数=耐用年数の分析ができるのではなかろうか。  機械設備の公正価値評価では、会計系の圧力で経済的退化を事業評価の手法を用いて求めることも多いが、それが過度になると、その資産を使用する会社の収益(利益)の変動によって資産の価値が上下することになり、妥当とは言えない結果にもなりかねない。  データを収集して統計的に「経済的耐用年数」「機能的耐用年数」を導き出すことが望ましいが、定量的・客観的に測定することが難しい要素でもある。 ■インフラ管理の部門には注目すべき 

 公共インフラの老朽化が叫ばれているが、少子高齢化や人口減少、予想される税収減という厳しい将来見通しの中で公共セクターは管理にいろいろ知恵を絞っており、評価の面でも 刮目に値する部分は沢山ある。  特に日本で仕事をしていると独創的なことよりコピペの方が好まれるが、新しい発想も積極的に採り入れていく必要があるのではなかろうか。

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フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰

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