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バスタブ曲線 ~ 物理的耐用年数と経済的耐用年数を考える

最終更新: 11月5日

物の寿命はどのくらいか。実務上よく使う耐用年数がこれに対応する概念である。


そして、対応年数というものが何を言うかということも議論になる。

評価の場合でも「耐用年数」は物理的耐用年数をいうのか、経済的耐用年数をいうのかよく議論になる。

いままでいろいろな文献を見てきたが、「耐用年数」は物理的耐用年数をいうのか、経済的耐用年数をいうのか、はっきり断定しているものはほとんどなかった。つまり、そもそも耐用年数というものが果たして物理的耐用年数と経済的耐用年数にスッキリ区別できるのかという問題があるのではないか。


バスタブ曲線(故障率曲線)という曲線が、安全面などの分野でよく知られている。

Wikipediaでは「故障率曲線(こしょうりつきょくせん)とは、機械や装置の時間経過tに伴う故障率y (t) の変化を表示した曲線のこと。その形からバスタブ曲線と呼ばれて、時間の経過により初期故障期、偶発故障期、摩耗故障期の3つに分けられる。」

また、厚生労働省の職場の安全サイトでは

「バスタブ曲線(故障率曲線)とは、時間が経過することによって起こってくる機械や装置の故障の割合の変化をしめすグラフのうち、その形が浴槽の形に似ている曲線のことです。」

と解説している。

バスタブ曲線

故障率曲線は時間の経過を「初期故障期」「偶発故障期」「摩耗故障期」に分けて考える。

使用開始直後は、製造上の欠陥によって初期故障が発生する可能性があり、これを初期故障期と定義している。例えば、家電製品などでも保証期間を購入後1年間としているのはこの「初期故障期」を考慮しての措置だとされている。「初期故障期」は使用に伴って発生が減衰していく特徴がある。

その後にくるのが「偶発故障期」であって、偶発的な故障が発生する期間である。これは機械の働き盛りの時期で有りまさにアクシデント的に発生する偶発的な故障をいう。

「摩耗故障期」は構成要素の劣化によって、故障率が時間とともに増加する時期である。 故障すれば使用するためには修理が必要となり、修理には費用もかかるし、機械が稼働できなければ稼働できない時間に応じた機会損失が発生することになる。


よく、評価の実査に行ったときに「この機械、どのくらい持ちますか?」と現場の方に質問すると「手入れさえすればいくらでも使えますよ」と言う答えが返ってくる。

そうなると半永久的ということにもなりかねないが、以前参加した評価士向けのセミナーで実査を行った上で耐用年数についてグループディスカッションをした際、あるグループが「手入れさえすればいくらでも使える」ことを根拠に60年という回答を出したところ、講師から「長すぎる」との指摘があった。したがって、いくらでも使えるからといって相当に長い期間を想定することは適当でないと考えていいだろう。  

我々が評価対象とする機械設備は通常、企業が利益を得るために使用しているものであり、単に物理的に使えれば良いというものでなく、商用利用を前提とした採算性の面からの検討も当然に必要になる。したがって、物理的耐用年数についても、経済性の視点からの考察が必要になるだろう。

このような性質があるから、見方によっては故障が頻発するならば物理的耐用年数とも言えるし、修理して使えるけれども経済的に合わないから経済的耐用年数とみることも出来るかも知れないが、事業でのオペレーションを考えれば、故障が発生した場合の修理費用や整備費用が収益に対して見合わないと考えた時点が寿命とされてしまうのが現実ではなかろうか。

我々が発行する評価書では「耐用年数」と記載しているが、前述のような理由から、結局はそれがハッキリと物理的耐用年数なのか経済的耐用年数なのか断定はしづらく、双方の考え方を併せ持って成り立っているといえるだろう。

(ちなみに、法定耐用年数は税法上の基準であり、時価評価を行う際の耐用年数とは意味合いが異なる。) そもそも、耐用年数は見積的先験的な要素が強く、確実性の高い将来予測を行うことは困難であり、予測には限界がある。但し、経営上は投資額の回収や再投資を考える上では極めて重要な要素になる。実際に耐用年数や残存年数に対するコンサルティングを依頼された弊会会員もあり、今後研究を深めていく必要が大いにあるだろう。


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