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  • 執筆者の写真Frontier Valuation

木質系バイオマス発電の理想と現実

更新日:2018年11月21日

ここのところ、弊社に木質系バイオマス発電まつわる話がいろいろと出てきている。

一時の太陽光発電のブームは固定買い取り価格の下落と共にすっかり下火になってしまった。 太陽光の次は風力発電が有力という見方も多いが、木質系バイオマス発電も大きな広がりを見せているようである。

木質系バイオマスは理想的な発電形態である。 なぜなら、衰退した林業の下支えになるからである。 林業がすっかり勢いを失ったがために山林の荒廃が相次いでいるが、バイオマス発電の燃料として利用できるのであれば新たな需要が生まれれば、燃料調達のため人手が入るようになる。戦後の復興期に植えられた樹木は今ちょうど成長を終え、伐採に適した状態になっている。成長力を失いつつある老木を伐採して若い木を植えれば二酸化炭素の吸収力も回復するし、水源の涵養にも役立つ。 経済活動に即応して植林→育成→伐採→植林のサイクルが生まれれば究極のエコロジー&エコノミーということになる

...はずである。

しかし、実はそうは問屋が卸さないのである。

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バイオマス発電の発電プラントはボイラーと発電機で構成されている。 一方、固定買い取り制度は1kwあたり何円と決まっている。つまり、発電量を増やせば収入は増加する。 発電量を増やすには出力を上げれば良い。 出力を上げると投資額が嵩むのが普通であるが、大抵は出力を2倍にしても投資額は2倍にはならない。 中でもバイオマス発電のプラントは出力を増やしても投資額の増加が少ないと言う特性がある。 だから、出力をできるだけ大きくし、発電量を増やすことで収益を拡大しようと考えるのが合理的な事業者の考え方である。

ところが、プラントを大きくして発電量を大きくしようとすると、その分、燃料である木材チップの必要量も多くなる。

日本では多くの森林が放置、荒廃していると言われているものの、多くが山岳地帯にあることから木材として持ち出すにはコストもかかるし、それ以前に伐採、搬出を担う人手が足りていないのが現状である。そうすると、事業者は木材チップの供給を自ずと国内ではなく海外に求めるようになる。

こうした流れによって、日本の木質系バイオマス発電は当初描いていた理想とは違う方向に進みつつある。

かつて、日本向けの住宅用木材の供給のために東南アジア諸国の森林が禿げ山になったと批判されることがあったが、今度はバイオマス発電の燃料のために同じような問題が出てくることになる可能性もある。

こうした状態では本当の意味での再生可能エネルギーといえるのか、疑問に思うところである。

評価人としては機械設備そのものの市場分析に留まらず、原材料のサプライ、伐採や搬出、輸送の労働力確保の可能性やコストなど広範な視点で市場分析を慎重に行って、設備、プラントの公正価値評価(時価評価)を行う必要があるだろう。


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