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捨てるコストを考える

更新日:2 日前

有形物には寿命があり、寿命がきたら処分することが必要になります。

有形物では土地以外の償却資産が該当します。


処理費用の問題

資産を処分する場合には通常処理費や解体費などの費用がかかります。

処理費用は規制の強化等によって年々上昇する傾向にあり、そのことでさらに処理が難しくなるケースもあります。

一般にこれから使うもの、新たに取得するものに関しては喜んでとはいかなくともお金を出すことに積極的な方が多いのですが、捨てるものに多額の費用をかけることには躊躇する人が多いです。前者はリターンも考えられるので「投資」になりますが、処理費用をかけてもリターンを生むことはまず考えられないので、「コスト」とみて抑制的になるのはある意味当然のことであると思います。


一方で、処理費用について逆の考え方も成り立ちます。で事業に供されて収益を産んできたものが使えなくなって廃棄されるのですから、既に得た収益には処分費用相当額を回収した分も含まれていると言う減価償却の逆の考え方です。


資産除去債務

この考え方に基づく会計処理のスキームが「資産除去債務」です。

資産除去債務は固定資産を除却する際かかる解体、撤去、廃棄、処分等の費用が、固定資産の使用によって不可避的に発生するものであれば、資産の助キャ時点ではなくそれを使用する各期間の費用として計上すべきであるという論拠に基づく会計処理のスキームで、「資産除去債務に関する会計基準」が2011年3月期決算から上場企業等に適用されています。

但し、資産除去債務の計上対象は資産の除去が法令や契約等で法律上の義務として要求される場合とそれに準ずるものだけであり、一般に資産を除却するときにかかると考えられる費用よりも狭い範囲が対象になります。

また、資産除去債務は上場企業などに適用される「企業会計」の分野のものであり、税法上は費用・債務が確定した時期に計上することになるため、中小企業においては通常の実務においては考慮する必要がないものであります。


会計処理の問題ではないキャッシュの問題

あり得ない話ですが、仮に、税法上で資産除去債務のような会計処理が認められた場合であっても、各会計期間の費用が増額となり、利益が増大することになります。利益となれば課税や配当、役員報酬などとして社外流出することになりますから、会計処理の制度をいじっただけでは廃棄物の円滑な処理が実現できるとは思えません。むしろ、処理費用相当分を外部に積み立てるなど、資金を拘束する仕組みがなければ実効性がありません。


太陽光発電では積立も

「将来、使用済みのパネルが放置され公害問題が起こる」と盛んに指摘されている太陽光発電ですが、2022年7月から、固定価格買取制度(FIT)による認定事業者については事業を廃止した際の施設の廃棄等費用を積み立てることが義務化されました。FITの場合は電力会社が固定価格で買い取るため、買取価格から天引きを行う源泉徴収的な外部積立が可能であるなど、積み立てが行いやすい環境であることや、小規模な事業用太陽光発電を運営している電気事業者であっても、電気事業者であることは変わりはなく、太陽光発電のみならず各所で厳しい義務が課されている既存の電気事業者との公正性の観点から、無責任な対応は許されず、撤去費の強制積み立てが導入できたという経緯があるようです。

しかし、太陽光発電についても一般家庭の屋根に設置されたソーラーパネルや、最近増加している自家消費型の太陽光発電設備に関しては強制積み立ての対象ではありません。その他動産についても、テレビや冷蔵庫、エアコン、パソコン、自動車などはリサイクル制度が整備されていますが、建物や設備の建築廃材についてはこうした仕組みはなく、特定空き家のように周囲に悪影響を及ぼしてどうしようもなくなった状態になって初めて行政が介入できる仕組みがやっと整備された状態というのが現状です。


家屋の解体(イメージ)
家屋の解体(イメージ)

どうしようもなくなる前に

特定空き家の場合は、私有財産を行政が強制的に取り壊すもののであるため、その性質から止むに止まれない事情がなければ介入できませんから、どうしようもなくひどい状態にならない限り手を付けることができません。しかし、近隣の地域に与える悪影響や行政のコスト、その他「最後は役所がなんとかしてくれる」というモラルハザードを生むリスクを考えると、ベストプラクティスとは言えない制度だと思います。

そう考えると、廃棄費用を事前に積み立てそのコストを税法上損金参入できることにするメリットはあるのかもしれません。将来の廃棄費用の合理的な見積が困難で費用過大計上の恐れも拭えませんが、的確な基準を設けるなどすることにより公平性も担保できるように感じます。

先人の残したゴミに将来の人々が押し潰されないよう、廃棄物の適正な処理と適正な処理をするための資金の確保は急務であると思いますが如何でしょうか。

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