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執筆者の写真Frontier Valuation

メガバンクが在庫買取による資金繰り支援に乗り出す

7月6日付の日本経済新聞をはじめ各社が伝えるところによれば、三菱UFJ銀行が半導体や小麦の在庫を買取るサービスをはじめるという。

報道によれば銀行が出資する子会社が、半導体や小麦、トウモロコシなどを輸入する企業に変わって在庫を一時的に引取り、企業が必要とする時に売戻しをするモデルで、買取額と売戻額の差額が子会社の利益になる算段のようだ。


このモデルは、動産を金融の手段に使うことではABL(動産担保融資)と共通するが、ABLは担保として借手に動産の所有権を残すのに対し、このモデルは動産の所有権を貸手が取得するという点で異なる。最もこの報道だけでは占有の状態がどうなるのか不明であり、どこまで話が進んでいるのか自体も少々懐疑的だと言わざるを得ない。


確かに、企業の保有する在庫(原材料、仕掛品・半製品、完成品)を考えると、換価性が高いのは一般的には原材料、ついで完成品であるから、原材料高の昨今の流れを加味するとここに狙いを定めた戦略は一理あると思われる。一方で金融機関が倉庫を持ってそこに保管するのか、借主の倉庫に動産を置いて占有改定の形態を取るのかが分からない。前者の場合は保管や運搬のコストが嵩み、後者の場合は買取品の管理の問題や借手が引取を拒否した時の問題が考えられるほか、半導体のようなボラティリティの高いアイテムでは逆ざやが生じないのか、貸手の都合が優先されれば借手がジャストインタイムで原材料を入手出来なくなることになり、借手にメリットがあるのか疑問でもある。


もしかするとこのような発想はABLの失敗の記憶から生まれているのかもしれない。金融機関の関係者から話を聞いたのだが、いざ強制執行になった場合でも素早い動きが出来ないなど、日本の法体系の問題を指摘する声も多かったから、所有権の移転に拘ったのかもしれない(もっとも、強制執行の段階で処分するようなプランがそもそも誤りで、経費を見込んだ正味の通常清算価値程度で処分するのが米国で主流のやり方)。 日本の場合はハンドリングの問題でリアルの金融機関がABLを扱うのは難しく、普及するとすれば、おそらくブロックチェーン上でNFTを用いた形式になるのではないかと考えている。仮にリアルの世界でABLを実行するとしたら、DIPファイナンスやスタートアップ支援などで事業再生や伴走支援の専門家も含めたチームで取り組む体制を構築することが条件であろう。


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