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  • Hideyasu Matsuura

アウトプットとアウトカム

更新日:2020年9月24日

9月16日の衆参両院本会議で菅義偉・自民党総裁が第99代内閣総理大臣に指名され、新内閣が誕生した。

行政改革担当大臣に河野太郎前防衛大臣が任命されたと聞いて、菅首相には行政改革に対する強い意気込みがあると感じたところである。


「事業仕分け」というと民主党とイメージする人が多いが、国政レベルで事業仕分けを最初にやったのは河野太郎氏である。ただ、その時期が問題で、最初に手を付けたもののすぐに政権交代となってしまい、テレビ受けするコンテンツに仕立てた民主党がお株を奪ってしまった。ちなみに、その後、自民党が政権に復帰して安倍内閣が誕生した後も、内閣府が仕切っていた民主党時代とは少々異なり、各省庁レベルで行政事業レビューが継続されている。 行政の仕事の"見える化"とチェックの取り組みは形式こそ変えているものの、依然として続けられていることを知っている人は案外少ない。

私も末席ながら事業仕分け(レビュー)行政評価の分野に10年ほど関わってきた。その中で頻繁に耳にしたのが「アウトプットとアウトカムの峻別」である。

最近では行政のみならず、民間レベルでも「アウトプットとアウトカム」を分けて考えるべきだという主張を目にすることが多くなった。


仕事をした成果という大まかな括りでは「アウトプット」も「アウトカム」も同じである。

何が違うかといえば、アウトプットは仕事をしたことによって得られた(直接的な)成果をいうのであり、アウトカムは仕事をしたことによって得られた成果によって得られる利益、便益をいう。

例えば、こちらのコラムも概ね週2回のペースで新しい記事をエントリーしているが、これは仕事をしたことによって生まれた成果だから「アウトプット」である。一方アウトカムは、書かれたブログの記事をどのくらいの人に読んでもらったか、読んでもらった人にどんな利益、便益があったかが成果の中身である。だから、間違った仕事をアウトプットしても、効果は全く無いどころかやるだけ無駄になるひどい場合には損失がアウトカムになるし、小さな仕事(インプット)でも大きな便益(アウトカム)が得られる場合もある。


民間企業の場合は主にどれだけ利益を上げられるかが「アウトカム」を評価する上で中心になる。しかし、多額の利益があったとしても企業活動の中で郊外を垂れ流して第三者に健康被害を与えたり、利益が詐欺まがいのスキームによってもたらされたような場合は外部不経済としてマイナスの「アウトカム」も考慮しなければならない。ここ数年でSDG'sとかESG投資と行った新しい概念が出てきているが、損益計算書だけでは測定できないアウトカムが重要視される社会になってきたことの証左なのだろう。


公的分野においては、その成果を測定することが民間企業以上に至難である。公的分野は利潤追求が目的でないから期間損益計算という概念がそもそも存在しないし、アウトカムも測定の切り口が様々であったり、サービスを受ける人の主観に左右されることもあり数値化、定量化はたやすいことではない。「数字で示せ」という評価人と、「数字では取れない」という事業説明者の応酬は何度も見た光景である。 納税者から見れば公務員が仕事をすることはいわば当然であり、納税者が期待するのはその仕事の成果から得られる便益、つまり健康で文化的な生活を送ることが出来るか、安全かつ安定して勤労に従事できるかといった福利である。評価をする立場からすれば、その効果を数値化して結論を出したいと思うのは当然ではあるが、残念ながらそれほど容易いことではない。 普段ついつい仕事を終えると「やったからいいだろう」「手離れした」なんて考えてしまいがちであるが、アウトカムは手離れした後のものであり、仕事の真の価値はそこで決まる。 某社の「結果にコミットする」というキャッチフレーズはまさにアウトカム重視ということなのだろうが、世間が求めているのはアウトカムであることには間違いない。

 

フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰

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