• Hideyasu Matsuura

織物産地が消滅するという予測

ある書物でセルビッジとシャトル織機のことを目にした。 セルビッジといえばジーンズに詳しい人は「耳」というワードが出てくるだろう。 シャトル織機は旧式の織機で、シャトルという道具を往復させることにより縦糸に横糸を織り込んでいくタイプの織機である。シャトル織機で織られた生地には端に「耳」と呼ばれる部分が出来るのが特徴である。ジーンズの元祖であるリーバイス501は1980年代の前半頃の製品にまでは「耳」があり、この時代までのものがビンテージと呼ばれて、愛好者の間では高値で取引されている。また、ビンテージを再現したレプリカも3万円以上の価格で売られている。

こうした流れに便乗したのかどうかは定かでないが、シャトル織機で織られた布をブランディングして売り出す動きがある。静岡県の遠州地域で生産される遠州織物がそのひとつである。 機械設備評価に携わっていることもそうであるが個人的に興味を持っていろいろ調べていくうちにあるブログに出会った。 静岡県掛川市の福田織物という会社のコラムである。 機械設備評価に携わっているといっても全ての機械を知り尽くしているわけではなく、案件に応じて勉強しなければならないことが多い。また、仕事ではなくても個人的な興味から知りたいことが多い。福田織物のコラムは実に読み応えがあるものだった。 その中で、衝撃的だったのがこの記事である。

「遠州織物産地の消滅が10月以降から起こる」

アパレル業界は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延によって大打撃を受けた。 緊急事態宣言によってアパレル店舗の営業が出来なくなり、売れ残った衣料が大量の在庫となったため、今後の新規生産が危ぶまれる状況で有り、10月以降にその影響が出てくるとの予測だ。現在は政府や地方自治体からの補助金等でなんとか切り抜けられているものの、その後が強く不安であるという。 福田織物は薄くて軽い、「光が透けるストール」などを手掛けていて、高品質な製品を求める消費者の人気を集め、高い技術力を持つ企業としてテレビでも紹介されている有名な会社である。信念と技術力を持つ会社の記事だから、説得力は高い。 ただ、何も打つ手がないかといえばそうでもないようだ。

ファッション産地の復活のシナリオ

ファッション業界の問題点を挙げ、それに対する対処策を示している。 冒頭引き合いに出したシャトル織機は古い機械であり既に生産されているものではない。こうした古い機械を上手く使って付加価値の高い製品を作る戦略も可能であるが、機械は償却資産で有り、物理的には劣化していくことは避けられないから、古い機械で稼ぐ残存者利益に頼るやり方は長期的に持続可能かと言えば疑問符が付く。 ブログでは、新しい機械に入れかえて自動化を進め、生産性を向上させることが生き残りの鍵になると主張されている。 もちろん一筋縄で行く物ではないと思われるが、設備投資はある程度やらなければサプライチェーンの維持は困難である。 投資がなければリターンは得られないし、資産は目減りして行くだけになってしまう。 バランスシート思考の重要性というものを改めて認識したところである。 残された時間はあまりない。だから、なんとかサプライチェーン維持のためになることをやりたいという思いは強い。

フロンティア資産評価研究会 松浦英泰


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