• Frontier Valuation

食糧不足対策の切り札か?-開発が進む"培養肉"

ケンタッキーフライドチキンが、鶏の細胞組織と植物由来成分からなる材料を使った3Dバイオプリンティングナゲットを開発すると発表しました。


アメリカで進む肉食回避の動き

5月20日にこのコラム発表した「Webinar 食品産業と機械設備の現状」の記事でお伝えしたように、アメリカでは近年、肉食回避の動きが進んでいます。

アメリカで起こっていることが即日本でも起こるとはいえませんし、日本では食肉に対して懐疑的な空気はほとんどありません。しかしながら、食習慣のこれからを考えさせられるような動きはいくつかではじめています。 先月、無印良品で「コオロギせんべい」が発売されましたが、即完売でした。この商品は今後予想される世界的な食糧危機に対する問題提起を含んでいます(無印良品のサイト)。

また、総務省の消費者物価指数によれば生鮮肉の消費者物価指数は2015年を100とした場合、2020年6月で108.9と5年間で約9%上昇しており、経済的負担が重くなっていることは事実です。

培養肉というアプローチ

肉食回避となると菜食という選択肢になりますが、菜食といっても大豆ミートのように肉を模した食材へのシフトもみられ、完全に肉食と決別というわけではないようです。

そこで注目されはじめているのが培養肉です。培養肉は、動物から取り出した細胞を、培養して増やすことにより作られる代用肉です。

2013年8月にイギリスで初めて試食が行われて、今日でも研究が進んでいます。

培養肉の場合、食肉に適した部分の細胞を培養します。ですから、①人口増大に対応しやすい②環境面での負荷が少ない③倫理面で問題がすくないといったメリットがあるといいます。


培養肉のメリット

畜産による食肉生産の場合、繁殖させて育成し最終的には屠殺して食肉を得るというプロセスになり、倫理的な問題があり、一部の人々から食肉関連業者への風当たりが強くなっています。また飼育の段階でも近年は動物福祉の観点から対応が求められ、欧米では狭いケージに閉じ込めて飼育するような方法は認められなくなっています。

また、畜産を行う場合の1kgの食肉を得るために数十キロの穀物、数万トンの水が必要だとされ、人口が増大し、開発途上国の生活水準が向上すると、地球全体のキャパシティを超えてしまう恐れがありますが、効率的生産で抑制できる可能性があります。また、畜産の過程で発生するメタンガスの温室効果は二酸化炭素の4倍であり、培養肉で排出をなくすことができれば環境面でも改善が期待できます。 生産管理が上手くできるのであれば安全性の向上も期待できます。動物の歴史は感染症との戦いとも言われるように、動物は食物から栄養を摂取すると同時に細菌やウイルスも接種してしまうため感染症にかかってしまうリスクもあります。生産管理がしっかりできれば畜産より感染症のリスクを抑えられる可能性もあります。

魚でも培養肉

培養肉は魚でも可能であると考えられています。細胞培養のスタートアップ企業がシンガポール企業とタイアップして研究開発を行うと伝えられました。水産資源の枯渇は深刻であるため、こちらも上手くいけば大きなメリットが考えられ得ます。

まだまだ開発途上

培養肉は有望な新技術、新ビジネスの一つだと考えられます。この分野へのベンチャーの参入や投資も盛んになってきました。

しかしながら、まだまだ研究段階で大量で安価、かつ本物の肉と遜色のない食味というものは実現できていません。また本当に安全で効率の良い生産ができるか定かではありません。細胞を培養するにしても培養液を作る過程で環境負荷が大きいようであれば効果は相殺されてしまったり新たな公害が出てくる可能性もあります。

生命倫理にしても動物を殺さない点では倫理的かもしれませんが、本来の生命のライフサイクルとは異なるサイクルを人工的に作り出すことになる訳ですから、そちらの観点での倫理の問題もあります。 クリアすべき問題もまだまだあるわけですが、持続可能性の観点から食肉生産を拡大していくことはSDG'sの動きに逆行しますし、肉食を完全に諦めて菜食にすることもハードルが高いと思われますから、全てを培養肉で賄わないまでも、ある程度の市民権を得るレベルには高めた方が良いのではないかと思います。 特に食糧自給率の低さを問題としている日本の場合は国家的に取り組む課題ではないでしょうか。

【参考文献】 楽しく悩んで、食の未来を変える ~「培養肉」研究の最前線~ - サイエンスウィンドウ https://sciencewindow.jst.go.jp/articles/2019/1024.html

細胞培養スタートアップのインテグリカルチャーがエビ細胞培養肉の研究開発を開始、シンガポール企業とタッグ - TechCrunch Japan https://jp.techcrunch.com/2020/07/20/integriculture-shiokmeats/

【関連記事】

<622>Webinar 食品産業と機械設備の現状

https://www.frontier-valuation.com/post/columns622


24回の閲覧

© 2020 フロンティア資産評価研究会 - Wix.com で作成されたホームページです。

  • Black Facebook Icon
  • Black Twitter Icon