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Webinar 食品産業と機械設備の現状

アメリカ東部時間で2020年5月19日の午後(日本時間で5月20日未明)米国鑑定士協会(American Society of Appraisers:ASA)のWebinar(ウエブセミナー)"ME157-WEB The State of the Food Industry and Machinery & Equipment" (食品産業と機械設備の現状)が開催された。


COVID-19と食品産業

ASAではCOVID-19の感染拡大以来、各専門分野でCOVID-19に対応した教育プログラムを続々とリリースしており、今回もその一環のセミナーである。 ニュース等で報じられているとおり、アメリカは死者数、感染者数とも世界最大で、AFP通信の記事によれば20日午前4時の時点で9万1179人が死亡、151万9986人が感染している。外出禁止などの行動制限も課されているが、緩和の方向に向かいつつあり、日本と似たようなの状況になっている。


具体的な影響としては

•パッケージ化された食品および飲料は販売が急増し、長期的に潤う

•大量失業で急速に状況が変わる可能性がある

•高価価格帯の商品は、より低コストの代替品に取って代わられる

Dollar General、アマゾン、Instacartは、過去60日間で雇用を増やしている

•eコマース、Instacartと店舗での購入の加速

•将来の混乱の可能性に備えて在庫を増やすことに重点を置く

•原料生産の増加

•健康支援製品に投資する消費者

•サプライチェーンの改善

•食品工場および流通ネットワークにおける強固な予防的食品安全対策

•食品施設に入る全員の健康診断

•全国的に食料が不足しているわけではない - 一時的な在庫不足 といったことが挙げられている。 過去の不況時の傾向としては・食料支出は堅調・外食の支出は急落・消費者は健康志向に・ディスカウント系小売店の売上が上昇・コスト削減が柱になるという傾向があり、今回もそのような傾向が見られるという。

ただ、通常の不況時にはない外出忌避の傾向は今回特徴的であろう。

現状の課題と今後の傾向

講義では、COVID-19が食習慣に与える影響として、Food Industry Executiveの調査内容を引用する形で、肉食を増やすと回答した人の割合が11.5%、菜食や動物性食品を忌避するビーガンに移行すると回答した人の割合が22.9%であったことから、菜食化傾向が強まるとの見解が示された。ただ、菜食や動物性食品忌避の傾向は2015年頃から見られており、COVID-19の影響というよりは、菜食化等の移行の流れが今回の問題で加速する要因となるといえるのかも知れない。 また、現状の食品産業の課題としては

•食品安全と労働者の安全

•貿易と関税の不確実性

•イノベーション/専門化

•透明性/トレーサビリティ

•テクノロジー、オートメーション、ロボット工学の導入

•植物性食品と乳製品の代替品の需要増大

•消費者間の健康意識増大と、製品の成分と栄養価の包括的な表示に対する消費者の要求の高まり が挙げられていた。

日本国内の動きを考察

 日本国内ではヴィーガンの動きはさほど広がりを見せていないものの、昨年までのインバウンド増加の中でムスリム食など、特定の食肉を忌避する食習慣への関心は高まっていた。近年、SDGsを支持する動きが広がっているが、食肉生産も環境面で限界があると見られており、SDGsの動きが本物であれば、肉食代替の傾向に動く可能性も考えられる。 過去の評価案件でも、動物福祉の観点から養鶏用のケージが欧州を中心に敬遠されているという話を伺ったことがあり、食品機械はもちろんそれに関わる機械設備なども中長期的に影響を受ける可能性もあると見られる。

 外食産業については様々な情報があるが、概ね、食事中心の外食事業は影響は大きいものの、テイクアウトの活用などで中には売上を伸ばしている企業もあるという。一方居酒屋などアルコール類の販売を主とする業態は壊滅的であるという。接客を伴う形態やライブハウスは緊急事態宣言解除後も忌避される可能性が高く、飲酒に対する見方にも変化が起こる可能性もある。昨年頃から飲酒の強制を考え直す機運が一部で高まっていることも視野に入れておいたほうがいいだろう。  一方、テイクアウトの増大で食中毒の発生の懸念が広がっている。レストランなどの外食の場合はいちばん美味しい状態、つまり熱いものはホカホカ冷たいものは冷たくして出すのがベストであるが、テイクアウトの場合は調理してから時間的な開きがあるため、食中毒の危険がある。食中毒の原因菌は10度~62度で繁殖するとされることから、弁当や総菜の製造工場などでは急速冷蔵ができるブラストチラーが使われているが、レストランでは必要としない設備である。緊急事態であるためテイクアウト営業が黙認されているのが現状であるが、中長期にわたってテイクアウト営業を計測する場合にはそれなりの投資が必要になる。  感染拡大当初とは異なり、夏日になる日が増えてきていることから、今後のことを考える必要が出てくる事業者も多いのではなかろうか。

「アフターコロナ・ウイズコロナで社会が変わる」という予測が多いが、どう変わるかまで具体的に示されている例は少ない。但し、今回のCOVID-19で突然新しい動きが出てくるというよりは、それ以前からあった流れが加速したり変化して具現化するのではなかろうか。

 

フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰

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