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執筆者の写真Frontier Valuation

ハンコというニッポンの文化

更新日:2020年10月19日

ホリエモンこと堀江貴文氏が"ハンコ"について「古いやり方」と指摘している。

「ホリエモンが指摘する、「古い体質」の日本企業」 BESTTIMES 書籍編集部コラム http://best-times.jp/articles/-/2937

ハンコについては機械設備評価のなかでも色々議論がある。

印鑑文化があるのは日本と中国くらい等とも言われるように、欧米諸国には印鑑を押す慣習はない。 当然ながら、国際評価基準(IVS)では評価書に署名をすることを形式的な要件としているが、押印しろなどとはどこにも書いていない。米国鑑定業務統一基準(USPAP)についても同様である。日本では不動産以外の鑑定評価について法的な規制はないので、不動産以外の評価書に印鑑を押さなくても少なくともそれで評価書が形式上無効になるということはない。 (日本の不動産鑑定評価基準では署名押印が義務づけられており、押印がなければ形式的要件を満たさないことになる)

ならば、いっそのこと押印はなくしてしまおうか?と最初の評価書を作成した時に議論になったのであるが、結局は押印をすることで落ち着いた。 動産の評価と並行して不動産の評価を行うことも多く、「不動産の評価書に印鑑が押してあるのに、動産にないのはお客様に説明しづらいのではないか?」といった懸念があるし、納品先から「印鑑がない」と評価書の修正を求められれば逆に手間とコストの浪費になることが理由である。

機械設備評価以外でも印鑑のことでクレームがつくことを度々経験している。 かなり前の話になるが省庁の出先機関にEXCELで書類を提出するよう求められたが、EXCELで提出したら担当者に「書類に印鑑を押すくらい当たり前だ、常識がない」と罵倒されたことがある。

印鑑を押す根拠として「同一性の確認」などと理由がつくのだが、現代の優秀なスキャナや工作機械、3Dプリンタを使えば偽造など容易にできてしまうことは想像に難くない。

にもかかわらず印鑑が重用されるのは、もはや文化としか言いようがない。 ある会社では、上司への敬意を示すため印鑑を右に30度傾けて押すのが慣習とされているらしい。

ちなみに米国鑑定士協会(ASA)では、評価士有資格者だけが使える資格者名入りのホログラムを評価士向けに販売している。ペーパーの書類に貼付するタイプとPDF等の電子文書に添付する電子署名タイプが用意されている。 海外では確認手段として先進的なアイテムも用意されているが、受け取って頂く側に認められなくてはどうしようもない。

残念ながら、当分は変わりそうな様子もない。


 

年内のエントリは今回で最終です。 当コラムをご覧頂きましてありがとうございました。

よいお年をお迎えください。

 

ASA認定資産評価士(機械設備) 松浦 英泰





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