以前から指摘されているが、中国の太陽光パネル業界が過剰生産にあえいでいる。
一昨日の東洋経済ONLINEに次のような記事が掲載された。
中国の太陽光パネル大手が「軒並み赤字」の泥沼
原価割れの価格競争や過剰生産が止まらず(東洋経済ONLINE) https://toyokeizai.net/articles/-/839423
記事によれば、中国の太陽光パネルメーカー大手は軒並み大幅な赤字もしくは減益に陥っている状態であるという。 日本にいても太陽光パネルの市場価格の特異性は実感できる。他の工業製品の価格は大幅に上昇しているのに太陽光パネルは横這い、あるいは小幅な下落にとどまっている。国の委員会で固定価格買取価格が毎年検討されるが、その出される資料でも、架台価格や工事費は上昇しているのに、太陽光パネル価格の軟調で買取価格も下落している状況である(再エネ賦課金の上昇を避けるため買取価格を下げたいというバイアスもあると思われるが)。 中国の太陽光パネル生産能力は年間1テラワット(1,000ギガワット=1,000,000メガワット)と言われており、中国以外で生産される太陽光パネルのおよそ5倍に当たり、中国製パネルの世界シェアは90%と推定されている。 これは中国政府が国内需要を賄うため大量生産を行うことで生産コストの低減を狙った結果だといわれているが、中国・国家エネルギー局は、太陽光発電設備の総容量は5億kW(520GW)と公表しており、年間の生産量が総容量を上回るような圧倒的生産規模からして世界のシェア独占を狙った政策ではないかと疑いたくなるのはある意味当然だろう。 確かに、生産規模を拡大すれば単位当たりのコストは下がってコスト競争力は上がるのだが、需給のバランスが崩れてしまえば、商品がだぶついて市場価格も下がる。そうなると生産コスト以上に市場価格も下がってしまい、市場価格が製造原価を割り込み、清算企業は赤字に陥るということになる。 中国パネルメーカーも業界再編で乗り切ろうと模索しているようであるが、メーカーの経営破綻は避けられず、実需と供給量も大きくかけ離れていることから、生産設備の廃棄も必要になると考えられる。 あとは、中国太陽光パネル業界の臨界点はどこになるかであるが、メーカーの時価総額の7割が吹っ飛び、日本円で数千億~数兆円の赤字を出している企業もあるというのだから、それほど先になるとは考えにくいだろう。中国の過剰生産は太陽光パネルだけでなく、鉄鋼、バッテリー電気自動車(BEV)、液晶パネルなど様々な分野に及ぶ。これらが連鎖的に破綻してしまったらと考えると非常に恐ろしいことになる。 もっとも、ここ10年来決壊するといわれて持ちこたえている三峡ダムのように粘り強さを見せてしぶとく生き残るかもしれない。 最近、日本では次世代の太陽電池と言われている「ペロブスカイト太陽電池」に対する期待が高まっている。シリコン型ソーラーパネルのように広大な土地を必要とせず、”すき間発電”ができることから、発電所用地が枯渇しつつある日本では有力な選択肢とされている。 ”すき間発電”のスペースはあったとしても電池と負荷の間には配線が必要で、その問題はどう解決するのか、疑問に思うのだが、起死回生のチャンスであることは間違いない。 勿論、中国がペロブスカイト太陽電池を指をくわえて見ているはずもなく、既に年間数GWの生産能力を持つ工場の建設に着手している。 ペロブスカイトが有望とされる理由には、日本が原料となるヨウ素の生産量で世界第2位のシェアを持ち、シリコン型太陽電池のように原料から生産面まで中国に牛耳られてしまう恐れがないことも一つに挙げられている。 また、ペロブスカイト太陽電池の使い方も、中国勢がシリコン型太陽電池とペロブスカイト型電池を一つのパネルに貼り合わせる手法で、配線コストは抑えつつパネルの効率を上げて発電量を稼ぐ方法を取っている点で、日本市場には参入しにくいとみられている点もある。ただ、中国企業のスピード感を考えると、これらの障壁を乗り越える可能性も十分考えられるから、健全な国内産業の育成を考えるなら日本も今のうちに手を打っておく必要はあるだろう。
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