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  • 執筆者の写真Frontier Valuation

低圧太陽光発電施設の格付評価

更新日:2023年11月24日


低圧太陽光発電施設のイメージ(写真ACより)
低圧太陽光発電施設のイメージ(写真ACより)

 本日(6月29日)、株式会社エクソルが一般社団法人日本資産評価士協会、株式会社CO2OSと太陽光発電施設の格付評価に関する業務提携を行ったとプレスリリースした。

 太陽光発電施設は2012年7月に固定価格買取制度(FIT)を開始して以降、設備容量は2012年からの年平均伸び率で26%に上昇。 FITの開始により、急速に設備導入量が増えてきた。 しかし、固定価格買取制度の弊害として再生エネルギー賦課金の増加で国民の電気料金負担が上昇するといった問題も出ている。  他方、電力を供給する太陽光発電の側もパネル価格が大きく下落したことにより、設備の取得価額も急激に下がっており、設備の設置コストを前提に算出される電力の買取価格も、入札制に移行した大口の買取価格は10円/kwを割り込み、現在では9円台/kwで推移していて、新規参入の発電施設の採算性は悪化している。加えて、電力の需給ギャップを縮小させるため、FITから市場の不均衡を是正する効果の高いフィードインプレミアム(Feed-in Premium:FIP)へ売電の仕組みが移行しつつある。このため施設の新設は買取価格の下落や、景観面で忌避されるケースが増えているメガソーラーよりも、中小規模、特に低圧の施設が選好されるようになってきている。  中長期的な面に視点を移すと、初期にFIT認定を受けた事業用物件の20年の買取期間が2032年から順次終了を迎える。ソーラーパネルの寿命は20~25年と言われているが、メンテナンスを適切に行って40年近く発電を続けている施設も存在するとのことであるから、買取期間が終了したからと言って即発電できなくなるわけではない。ただ、買取期間満了後の買取価格は、一足早くFITの終わった住宅用などで現在の”時価”である8~9円/kw程度が多く、産業用のものも同程度になるとすると、それまで最高約40円/kwで売電していた事業者にとっては、「寂しい価格」と感じることは間違いないだろう。やる気を失った事業者が施設を放置するようなことになれば、懸念されているような太陽光パネルの大量廃棄問題がおこったり、小規模な発電施設であっても電力インフラの一つであることには変わりがないから、電力供給が減少するリスクにもつながりかねない。  国のレベルでもこうした予測に立って、発電事業者の集約化、パネルの廃棄問題への対処など、起こりうる問題に対処出来る体制を整えている。    そんな中で、所属する日本資産評価士協会(JaSIA)の内部でも、評価の立場からこの問題に対処することはできないか検討されてきた。  2019年度には産業技術総合研究所(産総研)の調査事業の現地調査をJaSIAで受託し、全国300カ所の低圧発電施設の調査が行われた。  調査対象が低圧施設となったのは法規制の厳格な高圧、特別高圧などの大規模施設(いわゆるメガソーラーがこれに該当する)に比べ、低圧の施設は法規制が緩く、行政の監視が行き届かないため施設の実態把握をする必要があったからであるという。


 今回、JaSIAが株式会社エクソルが展開する「XSOL SOLAR STAR制度」にCO2OSと協業し、調査に協力することになった。前述の小規模施設の問題を解決する方法として、小規模施設をまとめて運用する「バルクファンド」の役割が大きいと考えられており、施設の譲渡を行う際のデューデリジェンスとしても、全国での実走調査の必要性が高く、全国的規模で機械設備評価人や不動産鑑定士にネットワークを持つJaSIAの強みが活かせると考えられたためである。  FITの初期には、社会貢献や手軽な投資という動機で太陽光発電事業を始めた個人や小規模法人が多かった。しかし、太陽光発電事業の負の側面が次第に明らかになり、発電事業者に対する管理責任を含む社会的責任は年々重くなっている。さらに、売電の仕組みもFITからFIPへの移行が進むなど、電力市場に対する高度な知識やノウハウが要求されるようになっている。そのため、小規模事業者や太陽光発電事業のノウハウがない異業種参入企業が、発電事業者としての重い責任を果たしきれなくなることも予想され、このようなケースにおいてそのバックアップとして、「バルクファンド」や大手の太陽光発電事業者に対する期待が高まっている。  「バルクファンド」や経験豊富な太陽光発電事業者への円滑な施設移譲を支援することなどにより、太陽光発電のサスティナビリティを向上させ、正確な知識と効果的な管理力を持つ事業者が管理する適切な施設が増加することで、太陽光発電による公害を抑制するといった社会的な成果が期待できる。これが、有形資産評価に携わる者として格付評価事業に参入する最終的な目的である。     本格的な展開に向けて準備は整いつつあるが、チャレンジングな試みであり、まだまだ試練はあるだろう。社会的な意義の高い事業であり、多くの皆様にご利用戴き、お役に立てれば幸いである。

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