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固定価格買取制度(FIT)とフィードインプレミアム(FIP)

更新日:7月14日

 太陽光発電を初めとする、再生可能エネルギーには固定価格で全量を電力会社に買取ってもらえる制度があることは広く知られている。

 固定価格買取制度は2012年に、遅れていた再生可能エネルギーの導入を促す目的で採り入れられた制度であり、Feed-in Tariffの頭文字を取ってFIT(フィット)と呼ばれている。


FITの弊害が顕著になってきた

 このFITにより、再生可能エネルギーの導入が一気に拡大したものの、粗悪な発電施設や景観を損ねる発電施設が全国各地で作られたり、電力買取の原資として電気の需要者が負担する「賦課金」が年々増大していることが問題視されるようになった。


 前者については太陽光発電施設の評価ガイドの作成などを通じて立地や管理の適正化が図られており、弊会会員も所属する一般社団法人日本資産評価士協会が2019年度に国立研究開発法人産業技術総合研究所と太陽光発電事業の評価ガイドをもとにした現地調査作業を実施している。弊会でもこの調査に従事した会員がおり、野放しと言われてきた太陽光発電にもな施設の適切な設置や管理を求める方向に転換しつつある。

斜面地に設置されたソーラーパネル
斜面地に設置されたソーラーパネル (写真ACより)

 後者については、太陽光パネルの価格低下に伴い買取価格が年々引き下げられているほか、2022年4月からFIPと呼ばれる制度が導入されている。


一見分かりにくいFIP導入の意義

 FIPとは「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」の頭文字を取った略称である。再エネ発電事業者が卸市場などで売電したとき、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せする制度である。

 こう書いただけでは非常に分かりにくい。


 FITは電力会社の全量買取が前提であるが、FIPの下では再生可能エネルギー発電事業者が卸電力取引市場(JEPX)や需要家と直接契約を結ぶ相対契約での取引、非化石価値取引など、売電先を選択することが出来る。この時の売電価格は固定価格ではなく、市場価格になるため当然価格は変動する。ここにプレミアムを乗せようというものである。このプレミアムは主として固定価格買取制度で得られると考えられる収入と、市場に売却して選られると考えられる収入の差で、これは機械的に算定される。(固定価格買取制度で選られる収入は市場で売却して得られる収入を上回ることが大前提で、この”旨味”を求めて発電事業者が参入してきた)。しかし、これだけでは、何故FIPを導入するメリットがあるのか分かりにくい。

 

 電力の需要は一定ではなく時間によって常に変化する。昼間は工業生産の活動、電車などの交通関係、夏であれば冷房の需要がある。夜は照明や夕食の準備、冬であれば気温が下がるので暖房の需要も高まる。一方で、特に太陽光発電は需要に見合った発電を期待出来ない。冬の夜であれば高まる需要に応えることは出来ないし、逆に、春や秋の昼間は需要が乏しいのにどんどん発電してしまう。このため九州や四国などでは電力会社がピーク時の買取を拒否する「出力抑制」がしばしば起きている。


 電力価格は市場の需給によって決まるため、需要に対して供給が少なくなれば価格は上がり、需要がないのに供給が多ければ価格は下がる。しかし、FITのように変動する市場価格とは関係なく、固定価格で買い取られるのであれば市場の価格の上げ下げに気を配る必要はなく、少しでも多く発電すれば多くの収入が得られることになる。

 一方、FIPは市場価格に一定額が上乗せされる制度であり、価格が上がる時間帯に供給を増やせばその分収入は増える。そうなれば、発電事業者にとっては、価格の上がる時間帯により多く電力を供給しようとするインセンティブが働くことになり、需給のアンバランスが緩和されるという算段である。


 問題は、貯めておくことができないといわれている電気をどのように貯めるかであるが、蓄電池の設置などが考えられているようである。FIPは海外などでは既に導入されている制度であり、近年は電気自動車へのシフトも相俟って蓄電池の開発競争も世界レベルで熾烈になっているため、技術革新が進むことも期待されている。

 また、廃車になったハイブリッド車の電池も活用されているようであり、電気自動車そのものも充電池として活用する方法も現実的になっている。そのほか、水を電気分解して水素をエネルギー源として活用する研究も進んでいる。こちらは実用的になるまでまだ時間がかかると見られているが、需給ギャップを埋める方法として期待されている。


発電事業者選別の時代に入った

 一見分かりにくいFIPではあるが、特に太陽光発電に関して言えば、とにかく導入を急ぐだけのフェイズから社会的ニーズにマッチした電力の供給が発電事業者に求められるフェイズへと移行したと考えられるだろう。  言い換えれば、パネルさえ設置しておけば収入が得られる時代は終わり、売電事業者として、ある程度のマネジメント能力がなければ収入の最大化が出来ない時代に入ったということである。FITが導入されてから既に10年を経過しており、初年度に認定を受けた発電施設は折り返し点にさしかかってきている。そう考えるとこの先10年は事業者淘汰の時代がやってくると見ていいだろう。  評価の上でも、特に収支見通しについてはFITの下では発電量の予測が出来れば収入の予測も比較的容易であったが、FIP前提では、理論的にはFITに近い収入は確保が可能であるものの、マネジメントの優劣が収入の多寡に影響するようになるから、有形資産評価よりも事業評価的な色彩が濃くなるのではないかと考えられる。  事業者としてはFITを好むと考えられるが、出力抑制が行われている地方などにおいては、事業者が早いうちにFIPにシフトする可能性も考えられる。


 発電事業者は電気の供給という社会的な責務があり、簡単には廃業されることには問題がある。したがって施設の譲渡や発電事業者のM&Aは今後増加していくと考えられる。

 

[参考文献]

FIP制度の開始に向けて 2022年2月14日<資源エネルギー庁>

再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート 2021年8月3日<資源エネルギー庁>

FIP制度とは? 仕組みやFIT制度との違い、今後の見通しを解説 2022年4月6日

<The Asahi Shimbun SDGs ACTION>


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