またまた朝ドラネタになってしまって恐縮です。
今期のNHK連続テレビ小説「舞あがれ」ですが、我々の世界の「あるある」をしっかり入れてくれているので、ついつい記事にしたくなります。
2月21日の分を拝見したのですが、市役所の職員が騒音の調査に来ると言うシーンがありました。
町工場が廃業し、跡地が住宅地に変わって新しく引っ越してきた住民から工場に対して騒音などの苦情が出ているという話だったのですが、実は現実にもある話、しかも良くある話なのです。
厳しい経営状態に置かれている町工場は、夜まで残業などということは日常茶飯事ですので、生産活動も深夜に及び騒音が出てしまいます。マイホームを持った人にとっては「夜はゆっくり休みたい」と思うのが当然ですから、そこで苦情が出てしまいます。
実際に近隣の新興住宅地の住民から苦情が出て、夜間の操業が難しくなり、収益は上がっているけど廃業という事例も何度か目にしました。
多分こういう話をすると、「工場が先にあったんだから後から来た人が文句を言うのはおかしい」とリアクションされる方は多いのですが、騒音を出す方が対策をしなければならないのが現実です。
住宅と工場がエリア的にきちんと棲み分けられれば良いのですが、そうならないのは法律に問題があると考える方もいらっしゃいます。
土地はどこでも好き勝手に使えるわけではなく、都市計画法という法律によって地域ごとにどのような用途に使えるのかが定められています(用途地域といいます)。
法律がしっかりしていれば、音の出る工場の隣に住宅が建つはずがないのですが、そのような問題が起こっているのは法律に欠陥があるというのです。
建物の用途は用途地域と建てられる用途が表形式になっているものが作られていて、不動産関係のプロであれば誰もが知っているものです。
都市計画法は昭和40年代に整備されたため、それ以前からあるものには効果が及ばないのですが、工場があるのは大抵、工業系の用途地域(準工業地域、工業地域、工業専用地域)です。
ところが、表を抜粋してみてみますと、準工業地域や工業地域に住宅を建てることが出来ます。工業専用地域というのはコンビナートや大規模な工場が立地するような場所が指定されますので、町工場が多いような地域は準工業地域や工業地域である場合がほとんどです。
この表を見る限り、「危険性や環境を悪化させるおそれがやや多い工場」と住宅が隣り合うことはあり得る話であり、工業地域に至っては「危険性が大きいか又は著しく環境を悪化させる恐れがある工場」と住宅が隣り合うこともある制度設計になっているのです。 工業系の土地は住環境としては住宅系の地域に劣るため、地価は低位であることが多く、安価な住宅が欲しいという需要者層にはマッチしてしまいますし、そうした需要があるからこそ、廃業した工場の跡地の買い手として分譲住宅を得意とするデベロッパーが名乗りを上げ、住宅地となり、そこに引っ越してきた住民と残った工場とトラブルになってしまうという悪循環ができあがってしまっています。
こうした話はかなり以前からあったのですが、時代の移り変わりに法律が必ずしも対応出来ているとは言えず、最終的には中小工場が追い出されてしまい、使われない住宅が残る、極相に至ってしまうのかもしれません。
ドラマではどのようにトラブルを乗り越えていくのかわかりませんが、最終回のあるドラマと違い現実の世界はエンドレスな問題で、マーケット主導な時代の変化を淡々と追認していくしかないのかと諦めに近い心境になります。 ドラマのワンシーンがこんな堅い話になってしまってまたもや恐縮ではありますが、ドラマの背後にある問題を多くの方に意識していただければ幸いです。
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