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評価額を競わせる依頼法に行政処分

更新日:8月9日

金融庁が7月15日に中部電力系の不動産投資信託(REIT)運用会社、株式会社エスコンアセットマネジメントに対しに3カ月間の業務停止命令処分を下した。

株式会社エスコンアセットマネジメントに対する行政処分について 
https://www.fsa.go.jp/news/r4/shouken/20220715.html 

 金融庁の発表した資料によれば、この会社は、エスコンジャパンリート投資法人との間で締結した資産の運用に係る委託契約に基づき行っている本投資法人の資産の運用において、親会社である株式会社日本エスコンからの取得となる不動産の鑑定評価を依頼するに際し、適切な利益相反管理の観点から問題となる、不動産鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけを行い、また、不適切な不動産鑑定業者選定プロセスをとっていたとされている。  金融庁はこの会社が不動産鑑定業者から提示された鑑定評価額に係る中間報告又は概算額が親会社の売却希望価格に満たなかった3物件の不動産について、親会社の売却希望価格を優先し、親会社の売却希望価格を伝達するなどしたうえで、鑑定評価額が当該売却希望価格を上回るものとなるよう、算定を依頼した不動産鑑定業者に対し、鑑定評価額を引き上げるための働きかけを行っていたことを不動産鑑定業者の独立性を損なう不適切な働きかけと認定した。  さらに、複数の不動産鑑定業者から不動産鑑定評価に係る概算額を聴取し、そのうち最も高い概算額を提示した不動産鑑定業者の鑑定報酬額が、概算額を聴取した他の不動産鑑定業者と比して最も廉価になるよう、当該不動産鑑定業者と交渉し、当該不動産鑑定業者による概算額が最も高かったことを伏せたうえで、当該不動産鑑定業者の鑑定報酬額が最も廉価であることを理由に、当該不動産鑑定業者を鑑定評価の依頼先として選定していたことを不適切な不動産鑑定業者選定プロセスをとっていたと認定している。

 

 米国鑑定士協会(ASA)の倫理規定に当てはめると、仮に評価人がこの会社の言うことを聞いて評価していたとすれば、おそらく「クロ」と判定されることは間違いないのではないかと思われる。そもそも、評価額を指定した受託は禁止されているし、中間報告や概算額として事前に評価結果を依頼者に提示することも控えるような規定もある。中間報告や概算額の内容を聞いて依頼者が評価を依頼するかどうかを決めること自体が成功報酬を条件とした評価受託とみなされる(条件に合った数字を出せば報酬を払い、そうでなければ払わないのであれば実質的に成功報酬と同じになる)ため、安易に中途半端な評価結果を依頼者に出すこと自体が評価人にとって自分のクビを絞める行為となる。    この会社のことかどうか定かではないが、不動産鑑定評価業者に概算評価額を提出させ、最も高い評価額を提示した評価会社に評価を依頼している依頼者があるという噂は兼ねてから仄聞していた(評価額を競わせる依頼法 https://www.frontier-valuation.com/post/columns649)。  REIT以外でも、M&Aなどで弁護士同士を競わせ、もっとも高値で売買出来る最良のプランを出した弁護士事務所に依頼していると言う話を講演で聞いたことがある。弁護士であればいいのかもしれないが鑑定評価の世界でこれをやられては不正の温床になる可能性があり、たまらないと思ったものだ。    金融庁の事実認定通りであれば、高い評価額を無理矢理弾き出させた上、報酬は値切られしかも選定プロセスで虚偽の説明をしていたのであれば、あまりにも不誠実な態度であり、完全にやり過ぎたといわざるを得ないだろう。金融庁が「投資法人のために忠実に投資運用業を行っていない」として、行政処分を下したことは非常に大きな意義がある。  市場のニーズに応えることも必要ではあるが、あまり妥協していては社会のニーズに応えられなくなる。そこが苦しいところである。  

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