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  • 執筆者の写真Frontier Valuation

中古品が新品より高い現象

自動車分野などでは、EVシフトが加速しており、電気エネルギーの依存度が増えていることが半導体不足の要因の一つにも思いますが、それ以外にも自動運転や安全装備の充実で装備が増えていますし、それ以前のガソリン車の時代でもエンジンや駆動系の電子制御化はずっと進んでいて半導体需要の増加は今日に始まったことではなく、以前から不足が予測する見解があり、それが現実のものになったと言うのが真相なのかもしれません。


ただ、近年は半導体以外のものでも需給が噛み合わないケースが生じています。このコラムでも一時期扱っていた建築用の高力ボルトは以前であれば供給過剰で値崩れを起こすことがあったようなものが採算性の低下でサプライヤーが減少し、一時的な需要の急増で深刻な供給不足が起こったじれいもその一つでしょう。


こういった場合に見られるのが、新品より中古品が高値で取引される現象です。


評価の世界の「コストアプローチ」(減価法)は、新品の価値(原価)が頂点にあって月日が経つにつれて、あるいは使用されることによって価値が目減りしてゆくという前提に立っています。

ですから、中古品が新品より高い価値を持つと言うことは通常はあり得ず、中古品の価格が新品のそれより高いということは、価値と価格が乖離している状態ということになります。


しかしながら、新品より高値で売られていることが事実があると言うことは、「それは間違いである」と一刀両断できる訳ではありません。

たとえば、「頼まれている仕事を今やらなければならない。そうしないと目の前にある問題が解決出来ない」とか、「この機械を使う仕事を今やれば他の仕事も受けることができる」といった合理的な理由がある場合には、例え一般的なセオリーからみて高額と考えられる価格であっても、そこで購入することが合理的であり、適正な価値として考え得るケースもあるからです。


新品より中古品が高値で購入しなければならない場合は

①緊急性

②需給見通し

③見込まれる収益とプレミア(通常より高値である部分)のバランス

④新品入手までのタイムラグと失う利益のバランス

を考える必要があります。


①緊急性と②需給見通しの関係

 緊急性がなく需給もしばらく経てば緩和する場合はあえて高値のものに手を出す必要はなく、需給が緩和するまで待てば高値で購入する必要はありません。


②需給見通しの予測

 予測は簡単ではありませんが、需給のバランスが崩れている要因は何かを考える必要があります。突発的な事象であれば、その問題が解決すれば需要が減り、または供給が回復します。根本的な問題を孕んで解決が長期化する場合、あるいは供給に限界がある場合はむしろ高値が常態化する可能性もあります。


③見込まれる収益とプレミア

 最終的には高値で買ってもそれ以上の収入が見込めるのであれば、購入を選択することは合理的な選択だと考えられます。また、需要急減後、市場がダブついた時に処分する場合の差損も考慮する必要が出る場合があります。


④新品入手までのタイムラグと失う利益のバランス

 新品入手までに時間がかかり、その間に失う利益があるのであれば、失う利益が本来確保すべきものか流しても仕方ないものかを考えなくてはなりません。

 少なくとも価格高騰時には需給を見極めずにストックを買い漁るようなことはリスクが大きい行動だと言えそうです。需給が緩和した時に高値掴みしたストックがてもとにのこることになってしまいかねません。  

 これだけ情報化社会だと言われているにも関わらず、サプライチェーンの混乱が起こるというのは皮肉なものです。世界中でいろいろなネットワークやシステムがあっても、これを網羅的に監視できるものはなく、できたとしても部分最適であるのが現状なのでしょう。  逆に世界の市場を俯瞰し、差配出来るシステムができるということは恐ろしいことでもあります。時折混乱するシステムと上手に付き合いながら生きていくのが実はベストなのかもしれません。

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