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  • 執筆者の写真Frontier Valuation

不動産鑑定評価書の押印が不要に

 昨年10月、菅義偉内閣総理大臣が初の所信表明演説の中で「行政への申請などにおける押印は原則全て廃止する」と発言しました。  その後、河野太郎行政改革大臣が旗振り役になって押印の廃止の方向に一気に動き出しました。当初は懐疑的な意見や印鑑業界の反発もありましたが、順調に進んでいます。


 弊会が関連するところでは、不動産鑑定評価書の押印廃止がいちばん大きいでしょう。 2021年8月13日付けで国土交通省不動産・建設経済局地価調査課長名で「鑑定評価書への押印廃止について(通知)」が発出され、不動産の鑑定評価に関与した不動産鑑定士又は不動産鑑定士補 に課されている鑑定評価書への署名押印すべき義務のうち、押印が廃止となり、署名のみで要件を満たすことになりました。施行期日は2021年9月1日です。


 不動産鑑定の場合、不動産の鑑定評価に関する法律で評価書の要件が定められており、鑑定評価書には署名と押印が義務づけられています。

 機械設備の評価の場合、日本では規定する法律がありませんでしたので、主に米国鑑定業務統一基準(USPAP)を準用する形で評価書を作成していますが、米国には印鑑の制度がありませんので、宣誓書への署名が義務づけられています。  当初は、日本で評価書を発行する際に押印はどうするのか?と言った議論もありました。  結局のところ、押印は義務付けではないものの、依頼者から押印がないと言うクレームを受けるリスクもあることから、弊会前身の有限責任事業組合では表題部には押印するルールにしていました。  あれから8年経って日本の不動産鑑定もこの度制度改正により扱いが同じになりました。とはいえ、今まで押印のある文章に見慣れていると、朱色の押印がないのはなんとなく寂しく感じるのも正直なところ。もちろん押印しても無効になる訳ではありませんから、見た目の観点からそのまま押印を続けてもまったく問題はありません。  とはいえ評価書が完全にデジタルデータになれば、押印自体もできなくなります。

 一方、デジタルデータになれば、改竄やコピーの問題など、いろいろな問題が出てくるはずで、そちらも考えておかなくてはなりません。

 河野行革大臣が就任したとき、ブレーンに民主党政権時代に行政刷新会議の事務局にいた方をブレーンに抜擢しました。通常、政権交代があるとかつての政権側にいたスタッフは起用されないのが慣例なのだそうですが、慣例を打ち破ってまで適材適所を断行したのを見て「今度こそ廃止に進むに違いない」と思いましたが、想像以上にあっけなく変わりました。  今までの慣例に縛られて思考停止に陥っていると「難しい」ことであっても、やってみればそうでないこともある良い例でしょう。  逆に印鑑は古さの象徴といって忌避するのもどうかと思います。宅配の荷物の受け取りなど、ポンと押せる印鑑があればサインするより楽ちんですから、そんな場面ではどんどん活用すればいいと思います。  何事も柔軟な思考で適材適所。この姿勢が必要でしょう。

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