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「限界産業」への処方箋~将来に技術を伝える必要性

「限界集落」という用語はニュース番組などを見聞きしていますとよく出くわします。 もともと、高知大学名誉教授の大野晃氏が、1991年(平成3年)に最初に提唱した概念なのだそうです。

限界集落(げんかいしゅうらく)とは、過疎化などで人口の50%以上が65歳以上の高齢者になって冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落を指す、日本における概念(Wikipedia)。

評価に従事している中で同じような場面に出くわします。 経済的な理由、技術的な変化で市場が衰退し再生産が行われなくなる産業があります。 こうした産業を「限界産業」と呼ぶのではないかと思っていたのですが、やはりそうした用語が使われてはいるようです。

市場が衰退すると、企業経営者は回収見込みに厳しい見方をして再投資を行わなくなります。 再投資を行わなくなれば、その産業に生産に必要な資機材を供給しているサプライヤーが減少するか、全くいなくなり、新規の資機材の価格がさらに高騰するため、旧式の生産機材を手直ししながら使うことになるという、負のスパイラルに陥ります。そうなると、あとはその機材が物理的寿命を終えた時にその産業が滅亡する結末が待っています。

先日Facebookタイムラインに高校時代の同級生が経営する水産会社が新造船を投入したという記事が表示されていました。 もちろん水産会社が投資するのですから漁船なのですが、漁船といってもカツオの一本釣り漁を行うための船舶です。 カツオの一本釣り漁は魚群の前に餌となる魚を蒔き、これに集まった魚群を腕利きの漁師たちが次々と釣り上げるというスタイルで、餌となる魚は漁船内に設けられた生け簀に入れて漁場に持ち込むのだそうです。 こうした装備があれば割高になるのは自明なのですが、それでも、網を使って魚群を根こそぎ捕獲してしまう巻き網漁に比べて、魚体に傷がつきにいことや、一本一本人手で釣るため、一網打尽というわけにはいかないので漁業資源の保護にもなるといった利点があるそうです。

しかしながら、漁業を取り巻く環境は厳しいようで、近年はカツオの一本釣り漁向けの新造船の投入はなく、今回も技術の継承という意味も込めて行政の補助等を受けて新造したようです。行政の補助等があるにせよ、収益性の厳しい分野に投資することは並大抵のことではなく、カツオ一本釣り漁という産業に与える意味は大きいといえます。

全ての産業を生き残らせろというつもりは毛頭ありませんが、市場経済に任せていれば全て問題が解決するというものでもなく、民間の事業者が結集したり、行政の援助によりサスティナビリティを確保し、将来に技術を伝えていくことが必要な産業もあります。

有効な投資をいかに確保し、産業のサスティナビリティに貢献できるのか。 資産の適正な時価を公正価値に求める我々評価人の立場からも時価評価を行う上でできることを考える必要があると感じています。

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