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耐用年数はいじらない

最終更新: 9月28日

あるところで、設備更新の指標として耐用年数の見直しを行って経営計画の再構築を行う作業をしている。

耐用年数は資産が使用に耐えうる期間を年数で現したものである。 実務上いちばん馴染みがあるのは税法の耐用年数だろう。税務申告における減価償却は税法で定められた耐用年数表に基づいて行われる。また、企業会計における減価償却も税法上の耐用年数表を流用することが通常であるから、いちばん広く使われている耐用年数の基準である。 一般に税法上の耐用年数は資産の使用実態に比べて短いことが多い。税法上の会計書類にある貸借対照表に備忘価格で記載されている資産が償却済みの資産である。しかし、貸借対照表に記載されていると言うことは(除却の処理を怠っていれば話は別)事業の用に供しているということだから、使用に耐えているといえる。税法に従った処理によって備忘価格とされている資産は多数存在するから、実際の価値よりは低く表示されていると言えるだろう。 一方、機械設備の公正価値(時価)評価においては、評価人が耐用年数を実態に即して判定する。 時価と税法上の基準によって導き出された貸借対照表価額との違いはこうした処理の違いに起因して起こる。   機械設備の公正価値(時価)評価で耐用年数が問題になるのはコストアプローチの場面である。 新規再調達コストから物理的劣化、機能的退化、経済的退化を控除して公正価値を求めるのがコストアプローチであるが、このうち物理的劣化は耐用年数と経過年数で計算する。残存年数は耐用年数から経過年数を引いた年数になるが、資産の価値は当然残存年数が多い(経過年数が短い)ほど高くなる。

 

ASAの評価メソッドにおいては、"耐用年数をいじらないこと"が大原則となっている。

 

たとえば、オーバーホールや改造を行った場合など資本的支出があった場合、その資産を使える年数が伸びたということで、ついつい「耐用年数が長くなった」と考えてしまいがちである。が、実際のところはそのもの自体の耐用年数が長くなったわけではなく、オーバーホールや改造で機能を回復したのだから、残存年数が延びたと考える方が合理的である。したがって、残存年数を適切に判断し設定することとされているのである。

(例えば20年使用した耐用年数20年の資産についてオーバーホールを行って、あと15年使えるようになった場合、耐用年数を35年とするのではなく、残存年数を15年として、15年/20年の価値があると考えるといった具合である) 仮に、耐用年数をいじった場合、例えば耐用年数を長くすれば、計算上、1年あたりの価値減少は少なくなる。つまり劣化の速度が遅くなることになってしまうのだからやはり合理的でないどころか、むしろ恣意的に何でもできてしまうことになる。

と、偉そうに書いたものの、私も耐用年数を延ばす...というような発言をして、仲間のASA評価士から「それをやってはいけない」と注意を受けたことがある。   世間一般が「耐用年数を延ばす」というような議論をしていることに、あまり強く口を挟む必要はないとは思うが、本質は"残存年数をどう見積もるか"、"残存年数を長くするためにどう対処するか"であることを知って欲しいところである。 当然ながら、評価士が明確な根拠もなく不用意に耐用年数を操作することは御法度である。 

ASA認定資産評価士(機械・設備) 

松浦 英泰


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