点検や修繕による価値の回復と時価

更新日:10月1日

 一般に機械や設備には修繕が欠かせません。  評価の現場でインタビューをしてみるとよく聞くのが「手入れさえしていれば機械は何時までも使えますよ」というコメントです。 確かに、物理的には使えるかもしれませんが、機能的に同じような機械に比べて陳腐化したり、経済的に効率が悪くなって現実的にはある程度の年数が経つと、事業資産の中からは消えていく運命にあります。  物理的劣化をみるうえで、評価の手法においては耐用年数と実効年数によって劣化の程度を見ます。例えば通常の耐用年数が20年と考えられている機械設備の場合、20年使用すれば、残存価値を残すだけになります。税法上で減価償却を行う場合は、資産を台帳に残しておく備忘価格として1円を残してあとは全てを費用として損益計算の区分に費用として計上しますが、時価評価においでは数%~10%程度を残存価値としてみることが通常です。    耐用年数は見積的、先験的なものであり、税法などでは期間が定められています。これは税法が主に利益操作を排して課税の公平性を期すために定められているものですが、時価評価においては実態に見合った価値を求めることが重要ですから、使用の実態に即して評価人が耐用年数を判断します。  そうすると、ある企業にとっては実態として耐用年数20年と考えられる資産を25年使うことが通常と考えられるのであれば25年と査定できますし、逆に18年くらいしか持たない使い方をしているのであれば18年と査定することもあります。  また、点検・修理をしっかりすれば機械が長持ちする、つまり耐用年数が長くなると言うような言われ方をすることがあります。

 一般社団法人 日本冷凍空調工業会が発行しているパンフレット「業務用エアコンを長く安心してお使いいただくために」では、適切な保守点検を行うことによって耐用年数が長くなることがわかりやすく説明されています。  パンフレットの中にはチャートが添えられており、抜粋すると右のようなチャートになります。  故障するまで保守点検をしない場合は急な右下がりの曲線になっていますが、適切な保守点検や修理を行えば、行うことによって機能の回復が図られ、ノコギリの歯のような線形になっています。機能的には年数が経過するごとに右下がりになるものの、何もしない場合より、機能の低下が緩やかになることが分かります。  「通常20年もつ機械だが、定期的に点検を行い、15年目にオーバーホールを実施すれば寿命は30年にすることも可能だ」というような考え方に違和感はないのが通常だと思います。

長くなるのは耐用年数か?

 となると、点検修理をすれば耐用年数が長くなるとも考えられますが、評価上では保守点検やオーバーホールを行った場合、耐用年数が長くなるのではなく、耐用年数は一定のままで、残存年数が長くなる扱いにします。つまり、通常20年使用可能な機械を15年目にオーバーホールするという前述のケースでは、残り5年だった残存年数を15年に戻すということになります。

 では、何故寿命30年にしてはいけないかというと右のようなグラフになるからです。  寿命が10年延びたから耐用年数が30年、残存年数も15年とすると、物理的劣化は15年/30年で50%となります。

 そうなるとオーバーホールをすれば劣化は緩やかになるということになってしまいます。オーバーホールによって革新的な機能改善があるなら話は別ですが、通常、そういったことは考えにくいです。つまり、劣化の速度は一定であるならば、分数で言うところの分子である残存年数を戻す方が、理論的に整合性がとれます。


価値の回復を定量化することは難しい

 とはいえ、どの程度残存年数を回復できるかの判断は大変難しいものです。ただ、オーバーホールをして新品同様になったとしても、新規再調達コストの水準まで戻ることはありません。評価原論(POV)の講義では80%程度が限界と教えられています。計算方法はいろいろありますが、ここでは割愛します。

 ベストなのは客観的な検査データを用いることです。出力を測っているならどの程度の能力が出せるか、金属配管の減肉の程度等が分かる検査をしていれば有力な資料となり得ますが、法的に検査が義務づけられているような機械設備でもなければそこまで厳密に検査していることはなく、あらゆる手段を使って合理的な推定をしなければならないのが実務の現実です。

   願わくばプラントメンテナンスの専門家のご意見も伺いたいところですが、時価評価を担当する立場としては、まずは適切な点検、修繕や管理保全措置が機械設備の価値に直結することを広く知っていただきたいというのが率直な思いです。

11回の閲覧0件のコメント

最新記事

すべて表示