有形資産を取得して事業を始めると、必ずいつかは出口を迎えることになる。
会社自体はゴーイングコンサーン(事業継続)が前提になるから、終わりというものがないことにはなっているが、会社が事業を行う手段として取得した土地以外の資産は必ず使えなくなる時が来るので廃棄あるいはそれ以前に売却するという「出口」に会社は向き合うことになる。
しかし、事業を始める際に出口のことまで設計に入れることは少ないのではなかろうか。
太陽光発電事業の場合は、太陽光パネルに有害物質(鉛、セレン等)が含まれていることもあり、発電事業の終了後、太陽光発電設備が放置・不法投棄された場合には環境汚染を引き起こすのではないかといった懸念が広がっている。特にFITが成立してからもうすぐ10年、つまり折り返し点が近づいていることもあり、今後懸念はますます広がってゆく可能性が高い。
太陽光発電事業を所管する経済産業省資源エネルギー庁は 太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループを設置して、太陽光発電設備の撤去費用の積み立てについて現在検討をしているところである。
これまでも、事業用太陽光発電設備(10kW以上)の廃棄等費用については、 2018年4月に積立費用の積み立てを努力義務から義務化し、同年7月から定期報告において積立計画と進捗状況の報告を義務化した。しかし、廃棄等にかかる費用の積立額や積み立て方法について明確になっていないため、廃棄等費用の確実な積立てを担保するための制度が必要とされ、現在はその制度についての検討が進められている。
再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会中間整理(第2次)(2019年1月) で、太陽光発電設備の廃棄等費用の積立てを担保する制度について、①原則として費用負担調整機関が源泉徴収的に積立てを行う方法による外部積立を求め、②長期安定発電の責任・能力を担うことが可能と認められる事業者に対しては、内部積立を認めることも検討するという方向性が示された。 廃棄費用の積立がなされるようになれば、公正価値評価上は不動産の場合で言うところの、マンションの修繕積立金に近い扱いになる可能性が高いと思われる。仮に積立額が不足している状態で設備を売却する場合、積立不足相当額が売買価格から控除され、実際の取引額が調整されることになるだろう。撤去費用等の積立以外にも改正FIT法では敷地をフェンスなどの柵で囲うことを義務づけており、対応ができていない場合には工事費相当額が売買価格から減額されることになる。
弊会でも太陽光発電設備のリスク評価を行っているが、撤去費用についても確認が可能であれば確認していくことになる。 現在は 再生可能エネルギーの事業認定状況が資源エネルギー庁のサイトで公表されており、撤去費用の積立の項目もあるものの開示に同意していない施設もかなり多い。将来的には情報が開示が義務化される可能性が高く、不開示や積立不足がFITの取消に繋がることにもなるかも知れない。
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