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写真用黒白フィルム復活~残存者利益市場での機械設備評価

写真用フィルム大手の富士フイルムが、6月10日に写真用の黒白フィルム「ネオパン100 ACROSII」を開発し、今秋に発売すると発表した。

写真用のフィルムはデジタルカメラやスマートフォンの登場によって手軽に写真を撮影、記録できるようになったことから、国内の統計によれば2000年をピークに急減し、2012年以降は生産者が2社以下となったため統計上秘匿扱いになってしまうほどの減少になってしまった。   技術革新や消費者の嗜好の変化で陳腐化してしまう製品は非常に多い。しかし、こうした製品の需要がゼロになるかといえば必ずしもそうではなくて、少ないながらも「この製品以外では代替が効かない」という需要も存在する。 こうした製品の市場は残存者利益を狙って生産者が生産を続けることになる。   今回の富士フイルムの黒白フィルムように一度廃盤にした製品を新技術を採り入れて復活させるのは比較的珍しいのではないかと思われるが、残存した数社が昔ながらの製法で製造・販売を続ける例は多い。 弊会でも以前手掛けた綿のふとん製造装置や、意外にも黒白のオフセット印刷機も残存者利益を狙うフェイズに入っているという。また、紳士服業界も最盛期の4分の1程度の需要になっており、主に4社の量販店が市場を分け合う構図になっているという。 需要が減って大量生産が必要なくなると、製品の生産者も少なくなるほか、生産者に対し製造機械を供給するメーカーも減少、または存在しなくなってしまう。従って、製造機械の調達コストが割高になったり、中古の機械が高値で売買されたりといったケースがよく見られるのも残存者利益市場に関連する機械設備の市場の特徴である。しかし、需要が安定しているため、高利益ではないものの安定した利益が望めるのもこうした市場の特徴である。 製造機械・設備の評価においてはコストアプローチよりマーケットアプローチを中心に公正価値を検討すべきであろう。ピーク時に比べて市場が細っているからと言って、新規再調達コストから思いっきり経済的退化を控除するようなやり方は適切ではない。こうしたマーケットでは製造機械のスケールメリットが出にくくなるため新規再調達コストより再生産コストを睨んで中古市場の市場価格が形成される傾向が強いためである。 もちろん、すべてがこのケースにあてはまるわけではないから、評価に当たっては市場分析は慎重に行う必要がある。 急速な人口減少に見舞われている日本では今後M&A等でこうした産業機械の評価案件が増えてくるのではないかと思われる。

【参考文献等】 世界最高水準の粒状性と立体的な階調再現で超高画質を実現 黒白フィルム「ネオパン100 ACROS(アクロス)II」 新開発 : ニュースリリース | 富士フイルム https://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_1430.html?_ga=2.177334637.994422019.1560220251-308103977.1560220251 2012年以降の写真フィルム生産量が秘匿扱い(非公開)に!! | Otowa Creation Co., Ltd. https://otowacreation.co.jp/archives/633

フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰

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