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執筆者の写真Frontier Valuation

総額取引の場合、土地・建物・機械設備に価格をどう配分するか。

更新日:2019年4月19日

土地と建物を一括でいくらという総額取引で売買が行われることが多いのではなかろうか。

 

日本の民法では土地と建物は別個の不動産であると規定されている。また、税法や企業会計の要請上、構成要素毎の価値をそれそれ明らかにする必要がある。不動産鑑定評価基準においては、土地・建物で構成される複合不動産の事例資料から土地または建物の事例資料を求める方法として配分法というものがある。

取引事例が対象不動産と同類型の不動産の部分を内包して複合的に構成されている異類型の不動産に係る場合においては、当該取引事例の取引価格から対象不動産と同類型の不動産以外の部分の価格が取引価格等により判明しているときは、その価格を控除し、又は当該取引事例について各構成部分の価格の割合が取引価格、新規投資等により判明しているときは、当該事例の取引価格に対象不動産と同類型の不動産の部分に係る構成割合を乗じて、対象不動産の類型に係る事例資料を求めるものとする(この方法を配分法という。)。 結論から言えば、不動産の場合、鑑定評価を行えば、構成要素毎の価格は求めることができる。   では、土地の上に設置された工場プラントや石油タンクなどの評価の場合も同じように評価は可能であろうか。 この場合でも不動産鑑定と機械設備の公正価値評価を並行して行うことにより可能である。 実際に事業の売買(M&A)の場合、PPA( Purchase Price Allocation =取得原価の配分)という作業が行われる。

購入価格を各構成要素に配分することはまさに鑑定評価の得意とするところである。 土地は非償却性資産であることから、償却資産で減価償却の手続きにより費用化が可能な建物や機械設備に取得原価を厚く配分したいという要望は一般に強い。特に機械設備の場合は税法上の耐用年数が短く、しかも備忘価格まで費用化が可能であることから、公正価値に比べて簿価が定額となっていることが多く、機械設備の公正価値の評価を行うことによって、償却資産への配分を積増すことが可能となる。

「簿価が低廉だから評価しない」のではなく「簿価が低廉だからこそ再評価が必要」なのが機械設備などの動産である。

 

フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰

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