top of page
  • 執筆者の写真Frontier Valuation

朝ドラの差押シーン

数日前、昼食時に連続テレビ小説「まんぷく」を見ていたが、信用組合が経営危機に陥り、理事長である主人公の夫が自宅を担保に差し入れていたため、貸付金の回収に走った銀行が自宅に乗り込んで差押の札を家財に次々貼り付けていくと言うシーンがあった。 ドラマの設定は30年代の前半で、なべ底不況と言われていた不況期である。  

このシーンを見て思い出したのが以前、裁判所に執行官を退官した方から聞いた話である。実際のところ現在は、家財には低い価値しかつかないという。液晶テレビなども出始めの頃は高値がついていたのだが、今は新品でも手の届く価格である。新品が安いのであるから競売の落札価格も低くなるのは当然である。 もっとも、昭和30年代は今ほど大量生産品が豊富にある訳でもなく、競売の場合でもそこそこの価格がついたのかもしれない。 銀行の血も涙もない行状を描きたかったのだろうが、そもそも銀行が差押に直接乗り込むようなことはないのではなかろうか。自力救済は許されないのだから、通常は差押えの強制執行は裁判所の執行官が行うのではなかろうか。これまた、近年の現実は裁判所の執行官ですら高飛車に乗り込むことは許されないそうである。また、在庫資産の動産担保融資に取り組む金融機関の方からは、回収時に担保となる在庫資産を押さえておくことが容易でなく苦労が多いのだという。


フィクションの世界にいちいちケチをつけるのは粋ではないが、少なくとも平成30年の設定ならあのシーンは難しいだろう。 逆に30年後、50年後に平成30年はどう描かれるのであろうか。ふとしたシーンからそんなことを思い巡らせてしまった。

閲覧数:13回

最新記事

すべて表示
bottom of page