こうしたことから、機械設備評価の世界では慣行的に「依頼者から提供された資料が正しい」という前提を置いて評価を行うやりかたが、実務上の慣行として長らく取られてきた。
しかしながら、昨年米国で制定された事業評価の資格CEIVの行為規範となるMPFにおいては批判的懐疑主義を取ることが求められている。
批判的懐疑主義とは、依頼者から得られた情報についても、そのまま鵜呑みにすることなく
批判的な目を持って何度も質問を繰り返すことを要求する考え方である。
何度も手を変え品を変え質問すれば、詐欺まがいの行為を見つけ出す端緒を得られる可能性が高くなるという傾向から、批判的懐疑主義が求められるようになったという。
勿論、「評価人だ!資料を出せ!!」といって立ち入って資料を押収できるわけではないから、限界があるのは事実であり、実質的に批判的客観主義が善管注意義務の具体的な中身になるのではなかろうか。
現状では機械設備の世界で批判的懐疑主義を取ることは明確に義務づけられていないが、
価値形成がオペレーションによる部分が大きい機械設備評価は、事業評価との縁が深く
批判的懐疑主義が機械設備評価の世界にも要求されるようになる可能性は高いのではないか。
「アレも責任取れません、コレも責任取れません」と宣言するだけでリスク回避できる時代はそろそろ終わりであると考えておいたほうがいいだろう。
米国鑑定士協会認定資産評価士(機械・設備) 松浦 英泰
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