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  • 執筆者の写真Frontier Valuation

のれんの減損と減損行動の恣意性

更新日:2018年11月20日

「のれん」(goodwill)とは、企業の買収・合併(M&A)の際に発生する、「買収された企業の時価評価純資産」と「買収価額」との差額のことである。(Wikipediaより)

つまり買収された企業の時価より高い額で買収を行った場合の差額が時価である。 当然ながら、買収する際、買い手は事故の考える価値以上の支出はしない。すなわち、時価として評価された純資産額以上に何らかの価値を認めて、高い価額で買収したということである。単なる資産の集合としての評価に留まらず、企業の持つブランド、イメージ、顧客などに起因する超過収益力が無形の資産を形成し、これに価値が生じていると考えるのである。

無形の資産は目に見えないものであり、物的な特定が困難で抽象的な概念に留まることから、その価値には客観性が求められ、のれんを自己創設することは認められていない。

この「のれん」については会計の世界で償却を行うべきか行わないべきかという論争がある。

日本においてはどちらかと言えば「のれん」を償却すべきという考え方が支配的であり、日本の会計基準では規則的な償却を行うことが義務づけられている。

一方、海外では「のれん」は償却すべきでないという考え方が支配的で、米国の会計基準や国際会計基準では「のれん」は償却しないこととされていて、例外として損失が発生した場合など、のれんの価値が損なわれたと認められる場合に減損を行うものとされている。 余談ではあるが、海外の会計基準を採用した場合、企業の業績が悪化した場合に減損を強いられることになり、企業にとって痛手にならないよう、あらかじめ機械設備や機械装置などの有形資産を時価評価して有形資産に帰属させるテクニックがとられることもある。 有形資産においても、継続使用の場合は一定程度のれん的価値を評価でオンすることができるためである。

減損を行うのは「のれん」のみならず有形資産でも収益力が低下したと見られる場合は減損処理を行う。 しかし、減損を逆手にとって損益調整のテクニックとして利用されることもあるようだ。

海外ではこうしたテクニックの濫用もあるようだ。 損失を出すことが目的だから、それが露骨になれば評価する側にもプレッシャーがかかることになるのは容易に想像しうる。

今のところ、弊社で受託した減損関連の評価ではこうした案件はない。いずれのお客様も紳士的な対応をして頂いているので、板挟みにされることなく済んでいるのは、大変感謝すべきことである。 また、最近は監査法人からアンケートの依頼が来て、依頼に際し評価価値の指定があったかどうかなどもチェックされるようになっている。 米国鑑定士協会(ASA)の倫理規定でも、評価数字を指定しての依頼は受けてはならないこととされており、倫理面の要請が徐々に浸透しつつあることを実感する。

評価の立場としても、減損行動が恣意的にならないよう留意する必要があるだろう。


※この記事は2016年12月26日に有限責任事業組合日本動産評価フロンティアのコラムで発表したものを再掲しています。

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