ここに来て最新鋭のジェット旅客機の売れ行きが鈍化しているそうだ。
「焦点:ボーイング787に販売鈍化懸念、多額費用計上の可能性も」
http://reut.rs/200tNpu (REUTERS)
最新鋭の旅客機は燃費の良さによる運航コストの低減をウリにしてきた。 数年前までは新興国を中心に経済成長が著しく、原油の需要が拡大するとともに資源の枯渇も見え始めているとも言われてきたことも相まって、原油価格は高値で推移していたものの、その後中国経済の変調による需要減退、アメリカのシェールガス革命、イランの経済制裁解除などの要因もあって、原油価格の下落が進んだ。最近は若干持ち直し傾向があるものの以前安値圏で推移している。
航空機の燃料はケロシンと呼ばれる灯油に近い性質を持つ石油製品であるが、当然原油価格の影響を受ける。
原油高は燃料の価格上昇につながり、航空会社の経営を圧迫する。 したがって、航空会社はより燃費の良い機材へのリプレイスに走ることになる。 逆に、燃料が値下がりすれば、リプレイスの意欲も減退することになる。
近年登場したボーイング社の787型機やエアバス社のA350型機は、炭素繊維素材を多用して軽量化を追求してきた。 実際にジュラルミン製の構造材と炭素繊維強化プラスチック(CFRP)構造材のカットモデルを持って比較したことがあるが、CFRPの軽さは際立っている。
しかしながら、CFRP素材は非常に高価であるため機体価格が高価である。また、加工が難しいため、ボーイング787やエアバスで最初にCFRPを多用したA380の開発は非常に困難で、その分開発費用が機体価格に上乗せされることになる。
航空会社によっては、高価な新型機を導入するよりも、技術的に成熟しており価格も安い旧型機を好む動きも出ているようで、反作用として新型機の受注が落ち込む格好になっているようだ。
ただ、大型旅客機は一度購入すれば20年は使用することになる。原油安の出口は見えづらいという予測もあるが、さすがにこの先20年にわたって今の原油価格が維持され続けるかと言えば、それはほとんど無いといえるだろう。
イニシャルコスト重視の選択か、それとも将来の燃料価格上昇を見据えた選択か。 どちらの選択が主流になるか、実に興味深いところである。
この記事は2016年6月17日に有限責任事業組合日本動産評価フロンティアのコラムで発表したものです
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