鑑定評価とAIの付き合い方~米国鑑定士協会による人工知能に関する声明
- Frontier Valuation

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American Society of Appraisers(ASA)は2026年1月28日にAmerican Society of Appraisers Statement on Artificial Intelligence(米国鑑定士協会による人工知能に関する声明)を発表した。
ニュースや各種メディアを見ていても、AIの話題には事欠かない状態であり、もはやAIは避けて通れないレベルとなっている。
以前からこの仕事に従事して「この仕事はインターネットのない時代には成り立たなかっただろう」とは常々思ってきたが、AIによって明らかに次の次元に移行していることは間違いない。実際に、数年前には行き当たることができなかった情報がAIは瞬時に探し出し、頼めば集計までやってくれる。
とはいえ、AIにはハルシネーションに代表されるように、情報に明確な誤りを含むことがある。したがって、評価人はその情報が果たして使うに堪えうる情報であるか常に検証をすることがより一層求められるようになる。
声明では、情報源としてAIにより得られた情報を採用した場合には鑑定評価書に次のような文言を加えることを推奨している。
Some of the data researched and information used in this assignment may have come from sources that employ artificial intelligence (AI). To the extent that is possible and appropriate, the appraiser has confirmed all data that has had a substantial impact on the approaches to value and any other analyses performed in this assignment. The opinions and conclusions stated in this report are those of the appraiser and are not solely the results of analyses using AI. Any direct significant use of AI in the development of this assignment is explained in greater detail elsewhere in this report.
本調査で使用したデータおよび情報の一部は、人工知能(AI)を活用した情報源から得られたものである可能性があります。鑑定士は、可能な限り、また適切である限りにおいて、本調査における評価手法およびその他分析に大きな影響を与えたすべてのデータを確認しています。本報告書に記載されている意見および結論は鑑定士個人のものであり、AIを用いた分析結果のみに基づくものではありません。本調査の作成においてAIを直接的に、かつ重要な形で使用した箇所については、本報告書の他の箇所でより詳細に説明しています。
また、鑑定評価書自体をAIに書かせる場合は次のような文言を加えることを推奨している。
Artificial Intelligence was used to generate parts of this report. All report content has been reviewed, edited as needed, and accepted by the appraiser.
本報告書の一部は人工知能を用いて作成されました。報告書の内容はすべて鑑定士によってレビュー、必要に応じて編集され、承認されています。
実際に生成AIなどを使った場合、何度も問いかけをすると回答が微妙に表現がぶれたり、矛盾点が出たりすることが多い。
例えばマシニングセンタで5軸加工機のデータが欲しい場合に「5軸MCの価格データ」を要求すると、5軸同時に制御が可能な「同時5軸」と、2軸は固定して3軸を制御する「割り出し5軸あるいは固定5軸」のデータがごちゃ混ぜになることがある。知っていればすぐにおかしいと気づくものであるが、残念ながら評価人は必ずしも全ての業界のすべての機械に精通しているわけではないから、分からないときはしっかり調べなければならない。
以前、レビューで出会った例では、建築資材の釘打ち機が対象であるにもかかわらず、パチンコ台の釘打ち機の事例を根拠に論証しているものがあった。内々で気づけば笑い話で済むのであるが、レポートとして出してしまうと評価人の信用問題になりかねない。
このあたりも、現状のAIではまだ的確な判断が難しいところであり、出てきたものをコピペして「ハイ終了!」とはいかないのが現状である。
AIで仕事がなくなるわけではなく仕事の質や人間の役割が変わるというのがまさにこの点である。
そもそも論として、AI登場以前も鑑定評価書には引用データの出処を明記するように先人の評価士に指導されてきた。AIになってもこの考え方を徹底ないし応用して取り組めばいいのである。習慣として評価書に出典を明示してきた評価人であれば、ASAの声明も「確かに、そうですよね」というレベルのことかもしれない。 AIで仕事の質や人間の役割が変わるといっても、少なくとも鑑定評価とAIという関係では突拍子もないことを求められるのではなく、今のところは今までの基本を守る、あるいはその応用というレベルと考えていいだろう。



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