純資産価額方式で非上場株式を評価する場合の機械設備の時価評価(2)
- Frontier Valuation
- 2024年5月27日
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純資産価額方式で非上場株式を評価する場合の機械設備の時価評価について、前回の記事で、「強制清算価値」が採用できるのか? という検討をしましたが、下記の評価の原則からすれば、採用は困難であると考えられます。
財産評価基本通達1 (評価の原則)
1 財産の評価については、次による。(平3課評2-4外改正)
(1) 評価単位
財産の価額は、第2章以下に定める評価単位ごとに評価する。
(2) 時価の意義
財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日又は地価税法第2条《定義》第4号に規定する課税時期をいう。以下同じ。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。
(3) 財産の評価
財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する。
というのも「それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」とされている以上、売買が強制されることを前提とする”清算価値”を採用する余地がないからです。 一般に、価値の水準としては「公正市場価値」>「通常清算価値」>「強制清算価値」であるので、時価評価をした場合は、理論上は高めの水準で価値が把握されることになります。 (評価対象物の状態等により理論上と同じ結論が出ない場合もあります)

簿価との関係ではどのようになるのか
全てのケースがどうかはわかりませんが、資産台帳に記載されている資産の価額よりは高めの水準になることが多いです。これは、資産台帳の価額は減価償却の未償却残高であって、時価ではないからです。基本的に資産台帳に記載されている価額は、別に時価評価を行っていない限り「簿価」であり、時価とは異なります。
財産評価基本通達に記載されているやり方でも、資産台帳に記載されている価額とは異なる価額が求められるはずです。
専門家の目線で評価する意義はどこにあるのか
財産評価基本通達1.1.(3)に「財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する。」との記載があります。ただ単に取得価額に物価指数を乗じて再調達価額を求めるだけでもそれらしい数字は出てきますが、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮しなければ妥当な価額とは言えません。
そのあたりの判断が甘ければ後々トラブルが起こってくる可能性がありますが、こうした無用の苦労のトラブルを未然に防ぎ、リスクを低減させるのが専門家の役割です。 逆に他で出てきた評価が正当であるかどうか、チェックするのも専門家の役割かもしれません。
具体的な評価額はどの程度であるか
これは、ケースバイケースですからわかりません。
しかも、前提条件として、資産のリストをいただいてもそれが実際にあるものなのか、どこにあるものなのか、どのような状態であるのかによっても評価額は変わります。実際に管理が行き届いている上場企業でも経理部門が知らないうちに現場で機械設備を動かしてしまったり、除却を見落としていたりというケースはかなりあります。
まず、評価対象がどうかから始めますので、具体的な評価額を算定するまでにはいくつもの作業を経る必要があって、残念ながらすぐにはお答えできるものではありません。
株価を安く算定するために安く評価できるか
残念ながら、専門家の立場では、説明困難な無理な価値を算出することはできません。そのような説明できない数字を出しても説得力がないからです。
しかし、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮することが求められている以上、あらゆる要因を考慮する必要があり、場合によっては価値のマイナス要因があるかもしれません。具体的にどのようなケースがあるかはお尋ねいただければと思いますが、資産の価値を引き下げる要因が存在するのであれば、評価価値は低くなります。
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