top of page
  • Hideyasu Matsuura

あの”夢のエネルギー”はどうなったのか?―「オーランチオキトリウム」と「メタンハイドレート」の現在地

更新日:2023年12月22日

電気代、そしてガソリン価格の高騰。国際的なエネルギーの需給ギャップに円安傾向が拍車をかけて、私たちの財布を直撃しています。 日本はエネルギー資源の乏しい国であるから仕方ないとは思うのですが、アメリカはシェールガスで資源大国に変貌したこともあり、日本も何かあるのではないかと思ってしまいます。 そう考えるのは私だけではなく、世の中の多くの人も考えることで、振り返ってみると、過去にマスメディアなどでいくつかの有望なエネルギーと言われたものが脚光を浴びました。 そんな「有望なエネルギー」がどうなったのか、調べて見ました。


オーランチオキトリウム  石油とほぼ同じ成分の油を作り出せる藻類であり、日曜の昼下がりに放映されているテレビ番組で、これを大量に栽培すれば日本は資源大国になると盛んに騒がれていました。2010年に筑波大学の渡邉信教授率いるグループが、特に高効率で化石燃料の重油に相当する炭化水素(スクアレン)を産生し細胞内に溜め込む株を発見し、茨城県つくば市で開催された藻類の国際学会で報告したのが始まりで、これを知ったコメンテーターがテレビ番組で盛んに宣伝して世の注目を浴び、オーランチオキトリウムに対する期待が高まりました。  その後、2011年に東北大学と筑波大学が仙台市の下水処理場で生活・産業排水を用いて有機物を与えることにより、オーランチオキトリウムを栽培する実証実験に乗り出しました。

 しかし残念なことに、研究成果は捗々しくなく、コスト面での問題をクリア出来なかったことから、2018年に研究は断念されたとのことです。


 オーランチオキトリウムを栽培するためには有機物が必要で、廃水の中から有機物を取りだして栽培出来れば夢のような話になるはずだったのですが、オーランチオキトリウムが育つために必要な有機物と、下水の処理で得られる有機物は異なるもので、期待されたほどの成果は得られなかったようです。


 どうしてもエネルギーとして使うためにはコストがひとつの大きな壁になります。エネルギー価格は変動が大きく、今は高騰期で良くても、やがてだぶつき気味になることがあれば価格は大きく下落しますから、リスクが高く、かつ大型の投資で回収期間も長くなることから、参入する企業はコスト面での要求も厳しくなります。


 とはいえ、今の脱炭素の動きで植物由来のエネルギーへの関心はむしろ高まっている状態です。研究は断念されたものの完全に終わったわけでもないようなので、もしかするとどこかで日の目を見ることもあるのかもしれません。

メタンハイドレート

 こちらは今でも時々耳にするメタンハイドレート。海底に眠るメタンハイドレートは燃える氷と言われ、その存在は以前から知られていたようですが、深海故に採掘が難しいという問題がありました。

 国が多額の研究費をつぎ込んで何年か研究を続けているようですが、こちらもなかなか実用化される気配がありません。  

 つい先日、こんな記事がアップされたようです。 【目安箱/7月4日】経産省の開発計画でメタハイは実用化されるのか? (株式会社エネルギーフォーラム)


 こちらも記事にあるとおり、多額の国家予算をつぎ込んで研究が続けられてはいるものの、コスト面でのハードルがクリア出来ていないとのことです。  こちらはその正体が「メタン」すなわち化石燃料です。そもそもメタンは二酸化炭素の4倍も温室効果があるとされているため地球温暖化抑制とは相容れないことや、火力発電で燃焼させることが主な用途になると考えられていることから、脱炭素の動きにも逆行するものであり、エネルギー源としては有望ではあるものの、今後扱いづらくなる性質のものです。  どちらかといえば、期待値が先行しているといわざるを得ず、特に保守派に人気のある国会議員がネット言論を巻き込んで議論を盛り上げてしまっているといった側面もあるようです。  特に、保守派の言論の世界では地球温暖化懐疑論が支持される傾向が強く、温室効果がある化石燃料でも抵抗なく受け入れられる土壌があります。  とはいえ、ネガティブなことばかりではないようです。 ”メタンハイドレート”とは? 科学の目でみる、 社会が注目する本当の理由(産総研マガジン)

 日本最大の公的研究機関である国立研究開発法人産業技術総合研究所が発表した記事によれば、メタンハイドレートの開発技術を、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留技術)へと活用するための調査、研究にも着手しているとされています。  メタンハイドレートの採掘とCCUSを上手くミックスさせることが出来れば、活用の途も開けるかもしれません。  そう考えると、現実的なのは再生可能エネルギーということになりそうなのですが、こちらも様々な問題を抱えています。  いずれにしても、国際情勢の不安定化や拡張的な財政政策をとり続けた結果として日本円の価値が下がり、縮小の方向に舵を切るのが難しい現状を考えれば、エネルギーの自給を進めなくてはならないのは当然のことで、一つに偏ることなく、いろいろと手を尽くしてやっていかなくてはならないのは間違いありません。

閲覧数:6回
bottom of page