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Hideyasu Matsuura

フレアジーンズの波

更新日:2022年10月26日

 先日、電車に乗って調査に出かけたのですが、電車内であれ?という光景を見かけました。

ベルボトムやブーツカットなど裾が開いたフレアジーンズを身につけている男性を複数見たからです。

 1970年代頃にはベルボトムは大流行して、エルビス・プレスリーはベルボトムのイメージが強いのですが、その後は女性のベルボトムは多少見かけるものの男性向けは珍しいというのが私の認識でした。  かつて、ASAの在庫資産評価の講座(ME206)を受講したのですが、担当した米国人の講師はアメリカのリーバイ・ストラウス社が経営危機に陥った際に在庫評価を担当した経歴の持ち主で、「倉庫からベルボトムのジーンズが大量に出てきた」と話していたのが印象的でした。要するに「倉庫から大量に在庫品が見つかる=不良在庫化している=作ったけど買手がいない=不人気」ということですから、その話を聞いてからフレアジーンズは尚更キワモノ的な印象を持っていました。  ただ、アパレル全般に共通するのですが、"売れる時は売れるでも売れない時は全然売れない"性質のものですので、フレアジーンズも波が来れば当たる可能性はあり、もしかすると今は大きな波とは言えないものの、多少うねりが出ているのかもしれません。


市場のクラスタ

 少し前に草彅剛さんの動画を見ました。草彅さんは芸能界きってのジーンズマニアとして有名ですが、動画の中でデニムをおつまみに一晩中ハイボールを飲んでいられるとしみじみと話しておられるのが印象的でした。おつまみといってももちろん食べるわけではなくて鑑賞しながらということだそうです。

 その鑑賞するジーンズも数百万円するということですから驚きです。マニアの世界ではヴィンテージジーンズは数十万、数百万円といった価格で取引されることも珍しくないのだそうです。おそらく、多くの人はタダのズボンに、いや下手をすると何も知らない人ならボロ布にしか見えないものが数十万円、数百万円で取引されるのですから、異常な世界と言えるのかもしれません。しかし、背景をよく知っている方にとっては手に入れがたい貴重なものであり、どんなにお金を払ってでも手に入れたいものなのです。

特に知識のない一般的な人にとってはほとんど無価値なものであっても、知識を持った特定クラスタの人達にとっては非常に高い価値のあるものになってしまうということは、一体そのものの正しい価値というのはどこにあるのか?ということになってしまいます。

ファストファッションの店で数千円も出せば手に入るもの、しかも着古されていれば当然もっと安いですよね...。と考える人の価値判断が正しいのか、いや、知識のある人が知っているマニアの相場が正しいのか。

 特に動産の評価をやっていれば常日頃考えて悩んでいるところです。

 金属の切削に使う高価なマシニングセンターを食品メーカーの人が同じコストを払って欲しいと思うか?

 食品を作っているメーカーが金属を削ってネジを作れる機械があっても普通は欲しいとは思わないはずです。

 まず、対象物を買ってくれる人がいるのか、それに対して売りたい人がどの程度いるかを把握することが重要になってきます。

 マニアなどのごく一部の人の間で高値で取引されるクラスタがあったとしても、一般の人がそこにアクセス出来ないような特殊な市場であれば、一般的な人が"マニア価格"で売買することは難しく、これを普遍的な価値と言い切ってしまうことには躊躇いがあります。


相続はどうなる?

 マニア価格が一般的なものと認められてしまうと相続の時に問題が出てくることも、全く無いとは言い切れません。どういうことかというと誰もがその"マニア価格"で全国どこでも買い取ってもらえるくらい世間にその価値が広く知れわたっているようであれば、それが一般的な市場価格と考えられる余地はあり、広く換金価値もあると言うことですから、相続の時に古いジーパンがタンスの中から出てこないか良く見なくてはならないということになってしまうかもしれません。  もっとも、数百万円で取引されていると言っても業者の買取価格はもっと安いことが一般的ですし、現実ではそこまで価値を認める人はそれほど多くはないと考えられることから、直ちに心配することはないと思います。  また、仮にある程度価値が付くとしても評価は大変難しいものになると予想されます。税務の専門家の見解をいただかなければ何ともいえない部分はありますが、大量に所持しているならともかく、たまたまタンスの中から出てきた一本の古いジーパンが重税をもたらす...というような可能性は低いのかなと思います。

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