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執筆者の写真Frontier Valuation

公正価値評価でも意識すべき非財務情報

今回もESGの話題です。 ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、企業の持続的な成長のためには必要な観点だと考えられているもので、先進国を中心に経済成長が行き詰まり、新興国の急激な成長に伴い地球環境が悪化していることを踏まえて重視されるようになった3つの観点です


財務情報と非財務情報

 投資家が企業に対し投資する際、金融機関が企業に融資する際、企業の財政状態や経営成績を慎重に見極めなければなりません。そのための有力な資料が損益計算書や貸借対照表などの財務諸表ですが、これらは金銭価値に置き換えられる財務情報を代表するものです。

 企業の利害関係者は多種多様に及び、従業員やこれから就職する学生、行政関係、一般消費者など多岐にわたります。しかし、財務情報がこれらの利害関係者の必要としている情報を提供しているかといえば、必ずしもそうではありません。

 例えば、求職者が財務諸表を見ても、業績がよく、解雇される心配はないかくらいは分かるとしても、どのような職場環境で、実際にどのような待遇なのかなどを知ることはできません。こうした情報は非財務情報に属するもので、数値化が難しく尺度が分かりにくいという難点があります。


少なくとも有形資産評価が扱うのは財務情報

 不動産や機械設備評価で扱うのは、間違いなく財務情報です。なぜなら貨幣額や金銭的な価値で結論を出すもので、会計で使用される目的での評価は、貸借対照表資産の部に記載される金額の根拠のひとつとされるからです。

 とはいえ、非財務情報とは全く関係ないかというと必ずしもそうではありません。


レポートライティングで指導された内容

 ここからは機械設備評価に話を絞りますが、参加したレポートライティング講座では、企業の概要や、対象資産によって生産される製品のことなどに触れるように指導されました。  不動産鑑定の場合は評価対象資産として、土地、建物を明記する必要がありますが、機械設備評価においても設置されている工場の概要(所在地、敷地面積、工場の規模、工場の構造など)も記載します。更に、評価対象となる機械設備の概要、状態、生産される製品や生産能力、製品が社会的にどのように有用性があるのかなど、大まかにではありますが記載します。


価値に影響する非財務情報

 こうした非財務情報は、公正価値を算出、判断する上で少なからず影響を与えます。  固定資産の減損では製品の社会的意義や将来性を必ずしも無視はできませんし、継続使用(ゴーイングコンサーン)を前提として評価では、のれん的な価値も織り込まれることになることから、特に意識する必要があります。  「読みやすい評価書」として文章は短めにして計算式をチャートにするやり方を勧められることもありますが(報酬が低くなっている現状では手っ取り早く、見やすいチャートの方が好まれる傾向もある)、評価の専門家が出す成果品としてそれで良いかは少々疑問が残ります。

非財務情報も意識した評価書を

 いままで、なんとなく価値判断をする上で必要な情報だと感じながら評価書に記載していたのですが、ESGについていろいろ情報を得るうちに、財務情報と非財務情報と言う概念を自分のやっている仕事にあてはめると、しっくりくることに気付きました。  簡便な評価書にまとめるのも市場のニーズかもしれませんが、幅広く「価値」について考察した評価書を作ることこそが評価人の本来の仕事であると思います。  ESGも意識した目で、もう少し改良の余地はないか考えていきたいと思います。 

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