top of page
  • 執筆者の写真Frontier Valuation

減価償却費を削減する方法

更新日:2 日前

 あるところで『「減価償却費を削減する方法を教えて欲しい」と相談が持ちかけられているから、分かる人は答えて欲しい』という質問が投げられた。

 これは会計の専門家の範疇の質問で私の専門からは外れるが、あまり耳慣れない質問なのでこれを機会にいろいろと考えてみた。

減価償却とは

 減価償却とは長期間にわたって使用される固定資産の取得(設備投資)に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きである(Wikipediaから引用)。


 長期にわたって使うことができる固定資産は、費用収益対応の原則によって取得原価を(取得時点の費用とするのではなく)その資産が利用できる期間にわたって費用配分をすることで、適正な期間損益計算が可能になる。これによって企業の経営成績を明確に把握することが可能になる。

 すなわち、減価償却は既に支出した費用について会計上の要請から合理的な方法によって毎期に配分する作業であるから、減価償却のやり方を変えても(既に支出した)費用自体が減ることはないのが特徴である。

 資金流出を伴わない費用なので、減価償却を行うことによって自己金融効果が得られるメリットがある。他方、減価償却のやり方をみだりに変えると恣意的な利益操作が可能になってしまうので、いったん適用したやり方は継続して適用することが原則である。これは税務会計であっても企業会計であっても同じで、その扱いは厳しい。

 

 「減価償却費を削減する方法」をネットで調べてみても恐ろしいほど情報は少ない。つまり、自己金融効果があるのにも関わらず費用を減らすことは、見た目で損益計算をよくすることはできるけれども、キャッシュ・フローの観点では全く効果がないどころか、費用の減少により利益が押し上げられ、税金や配当によって社外流出が起こるというデメリットの発生が考えられる(赤字の場合は損失を減らす効果はある)。

   減価償却をしていない決算書はあるが...

 実際に私も減価償却をしていない決算書をみたことはある。但し、そうした会社は減価償却を行う前から営業赤字で、減価償却を行うと多額の赤字が計上されることになるような経営危機に陥っている会社がほぼ全てだった。しかも、”減価償却不足額”として帳簿に記載されるから、損失が過少表示であることはわかってしまう。融資の可否を判断する際の金融機関の印象も決して良くなることはないという。

 

減価償却で小細工するよりも

 情報が出ていないということは裏を返せばやるメリットがほとんどないということであろう。

利益を出したいのであれば減価償却費で小細工するより売上高を多くする方が手っ取り早いし、その方が生産的である。


 一方で、見方を変えれば、減価償却費が負担に感じられると言うことは売上に対して過剰な投資が行われたということでもある。

そうであるならば、資産を整理して不要なものは除却ないし売却する方がいい。営業上必要な資産であれば売却してリースバックという手段が考えられる。但し、リースバックの場合は資産を一時的に現金化できるものの、その後は賃料が必要になるから資金流出を伴う支出が発生することを考えておかなくてはならないし、場合によっては課税の対象になってしまうことも考えられるから、税務の専門家を交えた判断が必要になる。


 もしかすると、制度の歪みを上手くすり抜けるテクニックがあれば減価償却費を減らして収益アップというウオンツに応えられるかも知れないし、そういうテクニックを教えられる専門家もいるかもしれない。残念ながら私はそんな魔法のようなメソッドは知らないし、原理原則から考えればそもそも存在しないのではなかろうか。

 冒頭でご紹介した質問に対し、質問者が満足するような回答が寄せられて解決ができたのかどうかは私も分からないが、少なくとも私には減価償却の意義を説明するくらいしかできそうにないので、やはり‘‘回答者”としてしゃしゃり出ていかなくて正解だったのかも知れない。

 

閲覧数:2,530回

最新記事

すべて表示

時価を知りたがらないのは何故か?

以前、香港人のASA評価人の方とメールでやりとりした際、 「日本では、機械設備などの価値を簿価で代用する習慣が強く、なかなか評価が受け容れられない」 と書いたところ、「どうして時価でないのか。理解できない」と返されたことがある。...

bottom of page