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減価償却費を削減する方法
更新日:2022年7月6日
あるところで『「減価償却費を削減する方法を教えて欲しい」と相談が持ちかけられているから、分かる人は答えて欲しい』という質問が投げられた。
これは会計の専門家の範疇のことで私の専門からは外れるが、あまり聞かない質問なのでいろいろと考えてみた。
減価償却とは
減価償却とは長期間にわたって使用される固定資産の取得(設備投資)に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きである(Wikipediaから引用)。
長期にわたって使うことができる固定資産は費用収益対応の原則によって、取得原価を収益獲得ができる期間にわたって費用配分をすることで適正な期間損益計算が可能になり、ひいては企業の経営成績を明確に把握することが可能になる。
すなわち、減価償却は既に支出した費用について会計上の要請から合理的は方法によって毎期に配分する作業であるから、減価償却のやり方を変えても費用自体が減ることはないのが特徴である。
資金流出を伴わない費用なので、減価償却を行うことによって自己金融効果が得られるメリットがある。他方、減価償却のやり方をみだりに変えると恣意的な利益操作が可能になってしまうので、いったん適用したやり方は継続して適用することが原則である。これは税務会計であっても企業会計であっても同じでその扱いは厳しい。
「減価償却費を削減する方法」をネットで調べてみても恐ろしいほど情報は少ない。つまり、自己金融効果があるのにも関わらず費用を減らすことは、見た目で損益計算をよくすることはできるけれども、キャッシュ・フローの観点では全く効果がないどころか、費用の減少により利益が押し上げられ、税金や配当によって社外流出が起こるというデメリットの発生が考えられる。
減価償却をしていない決算書はあるが...
実際に私も減価償却をしていない決算書をみたことはある。但し、そうした会社は減価償却を行う前から営業赤字で、減価償却を行うと多額の赤字が計上されることになるような経営危機に陥っている会社がほぼ全てだった。しかも、減価償却不足額として帳簿に記載されるから融資の可否を判断する際の金融機関の印象も決して良くなることはないという。

減価償却で小細工するよりも
情報が出ていないということは裏を返せばやるメリットがほとんどないということであろう。
利益を出したいのであれば減価償却費で小細工するより売上高を多くする方が手っ取り早いし、その方が生産的である。
一方で、見方を変えれば、減価償却費が負担に感じられると言うことは売上に対して過剰な投資が行われたということでもある。
そうなると、資産を整理して不要なものは除却ないし売却する方がいい。営業上必要な資産であれば売却してリースバックという手段が考えられる。但し、リースバックの場合は資産を一時的に現金化できるものの、その後は賃料が必要になるから資金流出を伴う支出が発生することを考えておかなくてはならないし、場合によっては課税の対象になってしまうことも考えられるから、税務の専門家を交えた判断が必要になる。
もしかすると、制度の歪みがあってそこを上手くすり抜ければ減価償却費を減らして収益アップというウオンツに応えられるかも知れないし、そういう専門家もいるかもしれない。お悩みの解決ができたのかどうかは私も分からないが、私には減価償却の意義を説明するくらいしかできそうにないので、やはりしゃしゃり出ていかなくて正解だったのかも知れない。