東京商工リサーチの調べでは35都道府県、114社がCOVID-19のあおりで倒産しているという。
ただ、経営コンサルタントなど経営指導に関わる人の多くは、3月~4月にかけて破綻するする会社はもともと経営に何らかの問題を抱えていて、COVIDが決定打になってしまうパターンであるから、むしろ5月以降に危機を迎える会社をどうするかが問題であるという。
倒産や経営破綻が増えるとその後の破綻処理が問題になる。評価の立場からすると特に破綻処理の過程で資産を売却するケースが増え、売り圧力が増大して資産の価格が下がったり、投売りで割安になった資産を入手して低価格を武器に商品やサービスを供給するプレーヤーが出現し、公正・健全な競争環境が阻害されることが懸念される。
価値に見合わない価格がいったんついてしまうとなかなか元に戻すのは難しく、新たな経営破綻の呼び水になる可能性もあるから厄介である。
こうした、競争環境を阻害しないためにも、資産の適正な評価は欠かせない。
例えば破綻処理にしても、早期回収を求める声が大きいことは理解できるものの、あまりに急ぎすぎてしまうと、回収できる金額が下がる=買い叩かれるということになる。
評価上の清算価値の定義としては、「通常清算価値」「強制清算価値」がある。
どちらも資産を強制的に売却することを前提とした価値であるが、早期の売却を前提とする場合が「強制清算価値」で、売却は強制されるものの処分に合理的な期間が与えられることを前提としているのが「通常清算価値」である。
具体的にどの程度となると、どのような資産を前提にするのかによって違いがあるため普遍的なラインがあるわけではないが、教科書的に一般的と言われる期間が「強制清算価値」で1~3ヶ月程度、「通常清算価値」で3~6ヶ月程度とされている。

破綻処理や企業再生の現場にいる人がこの期間をどの程度意識しているかは不明だ。
ただ、私も友人の弁護士から「小売業の破綻処理で定価の70%引でセールをやったらものの数日で完売してしまった」という話を聞いたことがある。これはまさに「強制清算価値」での処分であり、近隣の同業者にとっては酷であっただろう。
不況の連鎖を生まないために、評価を担当するものとして一人でも多くの人に知ってもらいたいと思う知識である。
フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰
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