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  • 執筆者の写真Frontier Valuation

「市場滞留期間」の目

機械設備評価の中で一般的に記載事項となっている市場滞留期間についての考察である。

市場滞留期間とは


市場滞留期間について明確な定義はないのだが、"売買の対象となるものが市場に公開されて、売買契約が成立するまでの期間”をいう。

一般に物の売買をしようとするとき、店頭に品物を並べてあるいは不動産の場合は物件広告を出すなど市場に公開してすぐに買手がつくことは通常ない。 情報が浸透するまでの時間は必要で、買手も物の価値について情報を得たり、価値判断について吟味したりするのにも時間を要する。


市場滞留期間と物の価格にはどのような関連があるのか


市場滞留期間は物の価値と大いに関係する。

スーパーマーケットの生鮮コーナーでは夕方になると値引きが始まる。「30%引」「50%引」といったシールが次々とパックに貼られ、買い物籠をぶら下げた客が待っていましたとばかりにショーケースに群がり、商品が次々と売れてゆく。


スーパーマーケットの生鮮コーナーにある品物は基本的には陳列した当日には売り切らなければならない。売れ残れば廃棄のためのコストがかかる。したがってその日のうちに売り切る必要がある。早く売るには安くすれば良い。買い物籠をぶら下げた客ショーケースに群がる...現象はまさにこれである。

早く売りたければ安くする。いいかえればショーケースに陳列する時間を短くする。買手がつくまでの時間を短くする...ということである。

逆に市場滞留期間が長いということは買手の望む価格より高いということになる。

市場滞留期間はどの程度が標準なのか


では市場滞留期間はどの程度が標準なのか。精緻に考えると対象物によってマチマチである。上記の生鮮食品でいえば、最大数時間である。それ以上は滞留することは許されない。アパレルの場合でも、半年も店頭に置いておけば季節が変わって着られなくなってしまう。季節ごとにバーゲンセールがあるのはそのためである。そう考えると最大でも2~3ヶ月程度ということになるということになる 機械設備等の場合はごく一般的な数字として6ヶ月~1年程度がめやすとされる。つまり、この程度の期間が公正市場価値を考える場合の市場滞留期間の目安になる。 もちろん、対象となるものによってその期間は異なるものであるから、評価人は取引市場について調査を行い、原則として対象物を市場に公開してから取引に要するまでの時間を調査しなければならない。 もっとも、現実に調査することは難しい。取引のデータが得られたとしても、市場に公開してから売れるまでどの程度の時間がかかったのかのデータが添えられていることはないのが普通だからだ。そうなると取引に関わる方へのヒアリングや公開データをマメに収集するなどの方法を取ることになる。


清算価値の市場滞留期間


では、清算価値の市場滞留期間はどの程度か。 清算価値は自由意志での売買ではなく、換価が確実に求められるときに成立する価値である。

こちらもごく一般的な期間として考えられているのが、通常清算価値(OLV)で3~6ヶ月程度、強制清算価値で(FLV)で1~2ヶ月程度である。

強制清算価値の具体的に想定する場面は競売である。もっとも、競売における価格が安い理由は短い期間で売買が行われることだけでなく、特に不動産については瑕疵について免責であったりといった理由も挙げられているが、早く売るためには価格を下げる必要があることは間違いない。


鑑定評価を行う上では市場滞留期間の考察が大きな鍵


上記のように、価格の形成と市場滞留期間には一般に強い相関関係があり、公正価値をはじめとした各種の価値を求めるに当たっては、根拠となる市場滞留期間を評価書に記載することは前提条件を明確にする上で重要である。 先日、日曜朝の某テレビ番組で生鮮食品の値下げのタイミングをAIを活用して推測するシステムが紹介されていたが、特に最寄り品の市場滞留期間にも応用できる可能性はあるだろう(もっとも現場では在庫回転率のほうが馴染みであると思われるが)。 評価の専門知識の延長でこうしたサービスを開発できればもっとお役に立てるはずである。

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