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  • 執筆者の写真Frontier Valuation

曜変天目茶碗の真贋論争に思うこと

更新日:2019年3月26日

昨年末、テレビ東京の看板番組『開運!なんでも鑑定団』で、世界に3点しかないとされる曜変天目茶碗が番組で鑑定にかけられ、骨董美術品の鑑定家である中島誠之助氏の鑑定によって4点目と認定され、大きな話題になった。

ところが、この鑑定結果に異論が噴出しているという。

鑑定評価という仕事をしている上で興味深い話であるが、私は古美術品が専門分野ではないので茶碗の真贋については言及できない。 また、番組そのものを見たいと思っているものの、まだ目にしていないのでどういう評価をやっているのかも分からないのでこの件については何ともコメントしようがない。

とはいえ、あの番組を見て、どの程度現物を見たり、資料を調べたりしているのかといつも感じることは確かである。 ある時、壺の鑑定だったか、割れて修理した壺があって「この壺には決定的な欠点がある」とX線の画像が提示されたことがあった。そういうところを見ると結構念入りに調査をしているのではないかと感じたことがある。

我々の機械設備評価の世界と骨董の鑑定の世界で大きく異なるのは、真贋の評価の点である。

機械設備の評価で真贋を見きわめるように求められることはほとんどない。いくつか理由はあるが、評価対象物の詳細な検査を行うことはその間機械の使用を停止しなければならず、技術的な面や時間とコストの兼ね合いから現実的ではないこと。評価を依頼される場合、工場一括などという集合物になることが多く、作業量が膨大になってしまうことなどが主である。

したがって、実務上は所有者あるいは使用者への聴聞や、技術的な資料を参考にすることとし、それらが正しいものであるという前提条件の下に評価を行うこととなり、「聴聞や資料の内容が現実と異なるのであれば、その価値は成立しない」という断りを入れて評価を行うこととなる。これは国際評価基準などでもスコープオブワーク(責任の範囲)として明確に定めておくべきものとされている。

ただ、米国人のベテラン講師から聞いた話であるが、「偽物の機械が評価対象となっていることに気づかずに評価してしまい、責任は問われなかったもののその依頼者からは2度と依頼がなかった」こともあるらしい。であるから、全く真贋のことを考えなくてもいいというわけでもないのが現実である。

一方、評価のご依頼を受けた資産一式の中に美術品等が含まれることがあるが、こうした場合は評価対象から除外して対応している。 美術品は償却資産ではなく、コストアプローチを適用するのは適切とは言えず、基本的にマーケットでの価値になるし、真贋判定の問題もあることから、安易に手を出すべきではないと心得ている。 以前評価を担当したゴルフ場の案件でも資産の中に著名な画家の絵画があり、評価対象からは除外したものの、参考として情報を集めてみたところ、その画家の作品には相当な価格が付されているようであった。名門ゴルフ場で相当以前から所有していたことから、本物に間違いないとは思ったが、やはり相当の知識なくして評価をするのは危険であり、対象からは除外とさせていただいた。

なお、一部著名作家の作品については、東京美術倶楽部鑑定委員会が権威ある評価証書を発行しているので、必要があればそちらのお世話になることになるだろう。

上で紹介した記事にも書かれていたが、古美術の鑑定の世界も相当に奥が深いようで、大ベテランの目利きでも判断を間違えることがあり、一生勉強をする必要があるという。また、分野は異なるものの何十年も経験を積んだ不動産鑑定士のベテランも「まだまだ分からないことだらけだ」という。

それだけ、鑑定というものは奥が深く難しいものであるということであり、手探りの世界である。身が引き締まる思いがする。

 

 

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