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  • 執筆者の写真Frontier Valuation

減損損失の判定における時価とは(2024年5月)

更新日:5月15日

 減損損失の判定における時価とは何か?減損損失の判定のための鑑定評価を受任することがあるが、評価を行う場合の「時価」とはそもそも何なのか。まとまった資料がなかなかなくて永年悩みの種であった。


 ASAの機械設備評価メソッドも2010年代初めごろまでは、伝統的な機械の評価理論であったため、必ずしも会計の評価では使い勝手の良いものではなかった。しかしながら、近年、減損会計の評価需要が高まり、ASAの方も会計の親和性を重視するようになり、Valuing Machinery and Equipment: The  Fundamentals of Appraising Machinery and Technical Assetsの最新版(2020)のほかPOVでも新しいカリキュラムが採用されるようになった。近頃、日本資産評価士協会(JaSIA)から関連の資料が提供され始めたので、一部をメモとして掲載する。

 

価値の定義

 まず、価値の定義についてであるが、Fair Valueが追加されている。


Fair Value The price that would be received to sell an asset or paid to transfer a liability in an orderly transaction between market participants at the measurement date. Source: Financial Accounting Standards Board Accounting Standards Codification Topic 820 (ASC 820)


公正価値

測定日における市場参加者間の秩序ある取引において、資産を売却するために受け取られる対価、または負債を移転するために支払われる対価。

出典:財務会計基準審議会 会計基準編纂書820


 通常の評価においては公正市場価値(FMV)を求めるものであるが、公正市場価値は税法寄りの定義となっており、会計の世界の公正価値(FV)とは差異は小さいものの異なる部分がある。このため会計目的の評価では公正価値(FV)を用いる必要がある。  ASC820は「公正価値の測定」に関する会計基準である。

 

時価の定義

「時価」とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格をいう(企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」第5項)


 なお、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」は日本でIFRS第13号又はTopic 820に相当する時価算定の基準が定められていないため、国際間の比較可能性を担保するために定められた基準であり、Topic820との整合性が大前提ということになる。

 

ASC820の時価

 ASC820では資産を金融資産と非金融資産に分けて論じているが、さらに非金融資産の評価前提として820-10-35-10Eで次のように定めている。


820-10-35-10E The highest and best use of a nonfinancial asset establishes the valuation premise used to measure the fair value of the asset, as follows:

a. The highest and best use of a nonfinancial asset might provide maximum value to market participants through its use in combination with other assets as a group (as installed or otherwise configured for use) or in combination with other assets and liabilities (for example, a business).

  1. If the highest and best use of the asset is to use the asset in combination with other assets or with other assets and liabilities, the fair value of the asset is the price that would be received in a current transaction to sell the asset assuming that the asset would be used with other assets or with other assets and liabilities and that those assets and liabilities (that is, its complementary assets and the associated liabilities) would be available to market participants.

  2. Liabilities associated with the asset and with the complementary assets include liabilities that fund working capital, but do not include liabilities used to fund assets other than those within the group of assets.

  3. Assumptions about the highest and best use of a nonfinancial asset shall be consistent for all of the assets (for which highest and best use is relevant) of the group of assets or the group of assets and liabilities within which the asset would be used.

b.The highest and best use of a nonfinancial asset might provide maximum value to market participants on a standalone basis. If the highest and best use of the asset is to use it on a standalone basis, the fair value of the asset is the price that would be received in a current transaction to sell the asset to market participants that would use the asset on a standalone basis.

 The highest and best useとは日本でよく使われている「最高最善の使用方法」すなわち最有効使用のことである。  その最有効使用の判定によって、次のように分けることとしている。

  

a.非金融資産の最有効使用がグループとして他の資産と組み合わせたり、他の資産(たとえばビジネス)と組み合わせて使用​​したりすることで、市場参加者に最大の価値を提供できる可能性があるもの。

b.非金融資産の最有効使用が、単独で市場参加者に最大の価値を提供できる可能性があるもの。

もう少し端的に言えば、


a.最有効使用が他の資産と組み合わせて使用の場合 =「使用」前提
b.最有効使用が単独で市場参加者に提供の場合 =「譲渡」が前提

ということになるだろう。

 ここでいう「使用」は固定資産の減損に係る会計基準の「回収可能価額」で規定されている使用による回収額である使用価値(資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)とは異なる点に注意が必要である。その点は「公正価値の測定及び開示に 関するFASBの公開草案」(日本公認会計士協会)の中で触れられている。  なお、最有効使用はあくまでも市場参加者の視点から考える必要がある。例えばある企業で全く売上が上がらなくても他の企業が対象資産を購入して有効に活用することができるのであれば、「使用」が最有効使用と判断されなければならない。減損の評価で、所有企業の業績を根拠に経済的退化を算定するような方法も考えられるが、この原則から言えば市場参加者でなく個別企業の事情でペナルティ(減価)を計上することは相応しくないと言えるだろう。減損の評価でコストアプローチはNGという意見も聴くが、使用が前提ならば機能的退化や経済的退化をしっかりと考慮したコストアプローチで算定できる余地はある。

 

 一方、最有効使用が単独で市場参加者に最大の価値を提供できる可能性がある場合とは、現実で言えば中古業者の買取あるいはスクラップとしての処分ということになるだろう。回収可能価額→譲渡・清算が前提→清算価値という発想になってしまうが、清算価値は「時価の算定に関する会計基準」第5項の「時価」の定義からは外れてしまう。従って、スクラップ市場、あるいは中古買取市場で成立する公正価値を求めることになるのではなかろうか。

 

 永年、前提となる概念や前提条件の設定に悩み苦しんできた。監査法人や担当する公認会計士には多額の損失を出すことに執心される方もおられ、激しい論争に巻き込まれることもあるのだが、法定耐用年数すら経過しておらず十分使えるような機械でもスクラップ送りにするような評価はできず、拠り所となるフレームワークもない中反論せねばならなかった。 ASAの評価メソッドとリンクした、しっかりとしたバックボーンが提供されるようになって有難いことである。

 

​減損損失認識の判定のための時価評価について https://www.frontier-valuation.com/impairmentguide

 

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