企業物価指数急上昇と動産の時価評価

日本銀行調査統計局が11月11日に2021年10月の企業物価指数(速報値)を発表しました。


国内企業物価指数は、前月比+1.2%(前年比+8.0%)。夏季電力料金調整後では、前月比+1.4%。 輸出物価指数は、契約通貨ベースで前月比+0.6%、円ベースで同+2.1%(前年比+13.7%)。 輸入物価指数は、契約通貨ベースで前月比+2.1%、円ベースで同+4.1%(前年比+38.0%)。<日本銀行の発表文を引用>

指数は2015年平均を100とした数字で、100より小さければ2015年平均よりも下落、100より大きければ2015年平均よりも上昇ということになります。 10月の速報値は107.8であり、2015年より7.8%上昇している計算です。 2021年10月の物価指数についてはこちらに解説がありますが、全体の指数としては石油製品の価格上昇による押し上げ効果が大きくなっています。個別品目で見ると石油以外にも木材、鉄鋼、非鉄金属が大幅に上昇しています。   そもそも企業物価指数とは何か。日本銀行のWebサイトには次のような説明があります。


企業物価指数は、企業間で取引される財の価格変動を測定するものである。主な目的は、企業間で取引される財に関する価格の集約を通じて、財の需給動向を把握し、景気動向ひいては金融政策を判断するための材料(景気動向を測る経済指標)を提供することにある。

また、このほか、名目金額から価格要因を除去して実質値を算出する際のデフレーターや、企業間での商取引における値決めの参考指標としての機能も有している。


物価指数は公的な指標の一つで、企業間で取引される財の価格変動に関するインデックスです。もうひとつの主要な物価指標として消費者物価指数があります。「消費者が購入する財(モノ)・サービスを対象とした価格」を集計した指数で、総務省統計局が毎月作成・公表しています。物価指数は日本だけではなく海外でも発表されていて比較的容易に情報を入手することができます。 動産の時価評価においては、特に新規再調達コストの把握において物価指数を使いますが、主として企業物価指数が用いられます。企業の保有する機械装置などは企業間での取引で取得することが多く、時価の把握においては最もその性質に馴染みやすいためと考えられます。 評価作業では資産台帳その他の資料等で得られた評価対象物の取得価額について取得時の物価指数と評価基準日の物価指数を比較することによって、評価基準日における新規の再調達コスト(新規再調達原価)を算出します。 企業物価指数は品目ごとに指数が発表されていますので、評価対象の品目に最も近い品目の指数を選んで適用します。とはいえ、指数はあくまでも最大公約数的な価格変動を現すものですから、適用に当たっては矛盾や齟齬が生じないかを慎重に吟味することが必要になります。以前の記事で具体的な現象について書いたこともあります。 また、物価指数などの各種指標は新しければ新しいほど不確定要素が多いため、発表されている数値が後日変化することもあります。冒頭「企業物価指数(速報値)」と書きましたが、後日確定値が発表される際には数値が変わることも珍しくありません。ですので、何時取得した情報なのかを控えておく必要があります。

また、指数の基準となる時点が5年毎に変わります。日銀の企業物価指数も現在は2015年基準になっていますが、2020年基準に近く移行する予定です。評価対象の取得時期が古い場合、基準の異なる物価指数を使用しなければならない場合があり、その場合は同じ基準で比較できるように換算する必要があります。特に1980年代以前については現在ほど指標が整備されておらず、古い指標を使わなければならないこともあります。 物価指数が今回のように上昇した場合は、当然ながら計算上出てくる新規再調達コストも上昇するため、最終的に得られる公正価値等も上振れする確率が高くなります。以前、減損損失判定の評価の際、アベノミクス後で金属製品の物価指数が大きく上昇したため、評価額が大きくなり減損回避になったこともありました。もっとも、企業物価指数は変動しますから、次の決算期までこの状況が続くかは定かではありません。

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