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Hideyasu Matsuura

固定資産台帳で机上評価は出来るか?

 機械設備評価の場合、実査を行わなくても机上のみで評価を行うこと自体は可能とされている。  当然ながら、実地調査を行ったか否かは、評価報告書に記載される。また、評価書への添付が義務づけられている「評価人の宣誓書」の記載事項にも実地調査を行ったかどうかは記載しなければならない事項となっている。


実地調査の有無を記載すべき理由

 実地調査の有無を評価書に記載しなければならないのは、他でも無く評価で出てきた数字の信頼性に関わるからである。実物を見もせずに評価をするなんて普通の感覚では信じられないかもしれないが、評価に与えられた時間が極端に短かったり、評価報酬が低ければ実査を行えないし、逆に実査はやらなくても、多少信頼性は落ちてもいいから安くやってほしいというクライアントがいることも事実である。したがって、実地調査を経ないで評価書が作られることも現実にはありうる。


実地調査をしないのはかなりリスキー

 評価人の感覚からすれば、実地調査をしないで価値評価を行うことはかなりリスキーである。米国の評価人の中には実地調査が認められない評価依頼は断るという人もいる。実地調査の前に資料を読み込んで現地に出かけるが、実物を見てみると資料を読み込んで頭の中に思い描いていたものと現物にギャップを感じることも多く、「やはり見てみないことには分からないことが多い」というのが偽らざる思いである。

 例え評価書に実地調査の有無を記載しても、中には事情を知らない第三者に評価書を渡し、冒頭に記載された公正価値の結論のみに関心が行ってしまい、数字の確実性は置き去りにされてしまうことがあるかもしれない。書いてあることを読まずに勝手な判断をする人が救われることはないが、やはり無用のトラブルに巻き込まれるのは避けたいものである。


固定資産台帳があれば判断出来るか?

 そうすると、実査に変わる確かな資料があれば評価は出来るのではないか?と考える人もいるだろう。実際に固定資産台帳を送ってきて「これで判断して下さい」と依頼を受けるケースも多い。  ただ、たいていの場合はそれだけで判断するのは困難である。

 固定資産台帳と言っても玉石混淆である。新しく操業を始めたばかりの工場や機械装置であれば有力な資料になり得るものもあるが、特に長い期間にわたって蓄積された台帳は分かりにくいものが多い。長い期間にわたって蓄積されたものは大抵、台帳作成に関わっている人が途中で変わったりしているし、同じ人が作っていたとしても数年経てばやり方を忘れてしまいその時々で処理が異なったりする。  また、場合によっては建物附属設備と機械装置がごちゃごちゃになっていたりするものもあったり、「機械修理費」といった項目があると何を修理したのかも分からない。機械にしても「コンプレッサー」「冷蔵庫」などと書いてあっても、どんなものか分からない。取得費から大きいものか小さいものかくらいは推測ができるが、それだけでは評価を行うのに十分な情報にはならない。また、台帳にあっても、除却忘れも往々にして有り、そもそも存在するかどうかも分からないのである。  したがって、固定資産台帳だけでは概要や規模感の推定ができれば御の字くらいと考えた方がいい。  固定資産台帳だけで評価するのは、クライアントに数字の精度が低いことを承知していただき、対外的に公表しないという条件で、かつ制度が良いと認められるような台帳を提示していただくなど、よほど限定的なケース出ない限り難しいと言わざるを得ないだろう。


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