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執筆者の写真Frontier Valuation

農地→宅地→?

更新日:2020年11月5日

巷間「負動産」という用語を良く目にするようになった。

不動産は土地とその定着物をいう。不動産は経済的に有用性があって売却することによって金銭に換えることもできるから資産として認識されるのが常識である。 ところが、近年は人口減少社会を迎え、特に地方では居住のニーズが減って不動産を必要とする人が減った。必要とする人が減れば売却は難しくなり、交換価値も減る。つまり、お金にならなくなる。これがさらに進んで誰も買う人がいなくなると、金銭には換えられなくなりすなわち価値はゼロになる。この状態で不動産を処分しようとすれば、持参金付きで引き取ってもらうことになる。大都市では信じられないかも知れないが、一部の地方では現実になっている。

高止まりする固定資産税評価額の弊害

 特に地方の市場性のない不動産で公的評価が市場実勢価格に比べて高止まりする現象が多く見られる。不動産取引が全く無いか、前述のように持参金付取引が行われている(実質マイナス)の場合でも、評価額がついているのが普通である。 公的評価のうち不動産の所有や取引にかかるコストに直結するのが固定資産税の評価額である。固定資産税の評価額がプラスになっている場合、評価額が免税点(土地30万円・家屋20万円)以上であれば、毎年固定資産税が課税される。また不動産取引の際には不動産登記で登録免許税がかかるほか、不動産取得税が課税されるが、この税額の基礎となるのが固定資産税の評価額である。 そうなると、例えば無償で土地建物を譲渡した場合でも、登録免許税を含む登記手数料、不動産取得税が課税されるほか、贈与の扱いで所得税も課税されることになるため、ここで取引自体を断念するか、不動産をどうしても引き取ってもらいたい場合には税金に見合う持参金を付けることになる。 すなわち、税負担が不動産取引の阻害要因となってしまうことがあるのだ。

マイナス評価はない。ゼロ評価も例外

 市場での取引価格がゼロ、実質マイナスであっても公的評価がゼロになることはない。根拠は明確ではないが、物理的に不動産を有している以上何らかの経済的利益を得ることができるから、価値がゼロにはならないという話を聞いたことがある。(ただ、これにしても市場が価値を認めないようであれば収益も交換価値もないから、価値のベースが何になるのか不明である)。 公的評価でゼロ評価を明確に認めているのは福島第一原子力発電所の「帰還困難区域」「居住制限区域」及び「避難指示解除準備区域」ぐらいであるから、例外といっていいだろう。

住宅の次は何になる?

 特に不動産に関する様々な社会制度は、「経済が発展する」「不動産価値が上がる」「買手がいる」という考え方が制度設計の前提になっていた。しかし、「人口が減る」「不動産が余る」といった時代には様々なほころびが生ずる。 農地、原野、山林といった利用価値が低い土地を、経済発展に伴い、工場や店舗、住宅に転換してきたが、工場や店舗も社会環境が変化すると住宅に転用されることが多くなった。今度はその住宅が過剰になり、人気のない地方ではいよいよ行き場がなくなりつつある。近年、所有者不明土地対策が検討されるようになったが、所有者が分かったとしても使う意思がないのであれば状況は変わらないし、誰も価値を認めないのであれば利用しようという気運は起こらないだろう。 おそらく、このままで行けば住宅のうちのいくらかは朽ち果てて原野や山林に還元されていくのではなかろうか。今のところ住宅の次に来るものの切り札はない。

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